第二十五話
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石に私は手を貸せないしね。
そんなことを考えていたら、小十郎が私の予想を遥かに超えるようなとんでもないことを言い出した。
幸村君辺りが聞いたら、破廉恥でござるーって叫ぶ前に噴水のように鼻血噴いて倒れるようなことを。
しかも普段絶対見せないような誘う顔して、ご丁寧に着物まで肌蹴て見せちゃってまぁ……そりゃ反則ですよ。
その顔と低音ボイスでそんなこと囁かれたら私だってくらっとするわ。押し倒しちゃうっての。
牢番は茹蛸みたいに真っ赤な顔をして何処かへと走っていく。
気配が遠のいたのを感じてから小十郎を見れば、あの子ったら泣きそうな表情に戻って膝を抱えて
顔を伏せていたから呆れてしまった。
「……今すぐ死にてぇ……」
同じことやったら私も多分死にたくなると思うけど、この生真面目な弟に関してはかなりダメージが大きかったんじゃないのかと思う。
だってさ、軟派なことは嫌いだって豪語するくらいだもん。ああいうのは小十郎には向かないよ。
でもここで折れられると困る。まだ鍵を持って来てもらってはいないのだから。
「いや、小十郎にしては良く頑張ったって。でもあともう少しだから。もう少しだけ頑張って」
とりあえず慰めて最後まで持たせようと優しく声をかける。
すると小十郎は今にも泣きそうなくらいに涙を溜めて私を見るからなんとも言えない気持ちになってしまった。
いやいや、気持ちは分かるけどさぁ……三十近いんだからそんな泣きそうな顔するの、止めようよ……。
「姉上、今すぐ殺して下さい……いえ、腹を切るので介錯をお願い致します……」
「気持ちは分かるけどまだ心折れないでって。折角頑張ったんだし、あともう少しだけ頑張ろう? ね?」
近づいて頭を撫でてやろうとしたところで牢番が戻ってくる。
私は小十郎から離れて、小十郎もまた顔を上げて涙を拭いて出迎える心の準備をしている。
「か、鍵を」
「格子から投げてくれ」
言われた通りに投げ渡されて、素早く小十郎は鎖を外した。それを私に投げ渡して、牢の格子に向かって小十郎が手を翳す。
翳してから間を置かず、物凄い光と音と共に格子が粉々に吹っ飛んでいた。
「……誰がテメェなんかにそんなことをするか! テメェはあの変態の相手でもしてろ!!」
完全にキレている小十郎に私も鎖を外して近づいていく。
私が優しく小十郎の頭を触れれば、瞬時に極殺が解けて私に抱きついてきた。
いやぁ……こういう行動を小十郎が取るのは本当に珍しい。
大人になってからこんなことやったのって、無かったような……。本当に嫌だったわけね、この子は。
「姉上……」
小さい頃に私に抱きついて泣いていた小十郎をうっかり思い出し
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