暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
アリアの願い
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こじんまりとした水溜まりの周りには……
 なんだ、これ?
 水が形を作ってるみたいな、透き通った花が生えてる。
 初めて見る植物だ。

「ここは、水鏡(みかがみ)の泉と同じ性質の水が流れ込んでくる滝。泉からはそんなに離れてないけど、段差があるせいで見つけるのに時間が掛かったのよね」

 俺の背後に横並びで現れたフィレスと子供マリアへ、顔だけで振り返る。

「触らなくても跳ばせるようになったのか。ずいぶんと芸を増やしたな」
「ええ。『扉』として意識を固定されてからずっと万が一を考えていたし。エルフの長ともいろいろ話したから。目視できる範囲にしか跳ばせないし、それなりに消耗するから多用はしたくないけど、手っ取り早いでしょう?」

 子供マリアが俺の右横に歩み寄って屈み、指先で透明な花弁をなぞる。
 先が尖った五枚の花弁。
 その中心には、細長い茎と繋がってる、飴玉程度の大きさの球体。

 軽い力で摘んだそれを、頭上に掲げて。
 中に液体が入ってるのか?
 透き通った何かが、光を弾きながらゆらゆら揺れてる。

「これは神々が元居た天上世界の花の実。泉と同じ水で育ってるおかげで、実の呼吸が近くに居る者の力や気配を隠してくれるの。一度摘んでしまうと効果範囲は限定されてしまうけど、レゾネクトにも有効だと思う。正確には有効だと()()()()、だけどね」
「マリアの記憶には無かったよな、こんなの」
「世界樹が蓄積(ちくせき)していた記憶の中に、この花と実の生態を知る堕天使の物が混じっていたのよ。ぜひ活用させていただこうと思って、早朝からずうっと探してたんだけど、森全体の様子が多少変化してて、どこから見ても道が」
「待て。早朝って、ひょっとしてお前ら、俺達より先に来てたのか?」
「そのようですね」

 フィレスも子供マリアにならって俺の左横で屈み、花の実を摘む。

「レゾネクトへ斬りかかった瞬間に世界樹から跳んできたんじゃないのか」
「あれは、花を探してる最中に鳥が騒がしいと気付いて念の為マリアさんに泉を遠見していただいたら、明らかにクロスツェルさんの偽者が浮いていると言うので、慌てて翔んでいったんです」

 パタパタと、翼を軽く動かす。

 空間移動じゃなくて、翔んできただけ!?
 そんじゃ、いきなり現れたように見えたのは、俺が立ってた位置からだとちょうど死角に入ってたからか。

 なら、泉の周りで他人の気配を感じなかったこと。
 レゾネクトを避ける羽根。
 姿を見せる前に、俺の動きを縛ったフィレスの歌。
 諸々の違和感に説明はつく。

 単に、偶然居合わせてただけかよ!

「アリアと接触する為の作戦は立て直すにしても、これは持っていたほうが良いと思うわ。あま
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