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逆さの砂時計
アリアの願い
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ます』

 あの女……
 自分に仕える人間は無視して、他の宗教関係者を(たぶら)かして回ってんのか。

「『信徒が急速に増加している』……つまり、上の人間がどれだけ止めても国内に話が広まるのは時間の問題だった。だから混乱を避ける為に、あえてこういう形で先手を打ったんだと思います」
「なら、もっと早く開示しとけよ! 腹立つな!」
「それだけ慎重な対応を迫られているのでしょう。アリア信仰や国の内部で収まる話ではありませんし。一つ間違えれば、宗教を越えた国家間戦争にもなりかねません。良くも悪くも、宗教と権力は繋がってますから」

 苛立ち任せでグシャグシャに握り潰して捨てた会報を、フィレスが拾って丁寧に畳み直し、子供マリアに返す。
 律儀な奴だな。

「とにかく、この手掛かりの検証が必要です。私は、ご覧の通り人間世界に戻れる容姿ではありませんし、女神アリアと同じ髪色を持つマリアさんを、気が立っているであろう、宗教関係者の周りで動かすわけにもいきません。その点、貴方達なら苦もなく潜入できると踏んでいたのですが……やはり、クロスツェルさんが居ないのは厳しいですね」
「要は、お前らが世界中で未開拓地域を捜し回ってる間、アリア信仰以外の上層部とやらを見張っとけっつー話だろ。アイツ無しでも問題ねぇよ」

 言葉だの文字だのが通じなくても、アリアが視界に入ればそれで充分だ。
 俺の手が届く距離にアリアが居れば、後はどうとでもなる。

「そう……。そのつもりで、貴方達を捜そうと思ってたの。でも、それじゃ間に合わないかも知れない」
「間に合わない?」
「貴方に記憶を見せている間、リースリンデから話を聴いてたんだけど……アリアは、世界から自分の力を隠す為に、水鏡(みかがみ)の泉で眠っていたそうね」
「ああ」
「そのアリアを、十数年前に突然現れたレゾネクトが無理矢理起こした」
「らしいな」

 何かを思案する子供マリアに首を傾げるフィレス。
 リースリンデも、不安そうに子供マリアの顔を覗く。

「泉で目を覚ましたアリアは、端から見ても分かるほど()()()()()()と言うくらいだから、当時はまだアリアのままだった筈よね。でもクロスツェルの教会に居たあの子はアリアとしての記憶を失い、別人(ロザリア)になっていた。時間を巻き戻しただけじゃそうはならないわ。貴方は泉を出てからクロスツェルに出会うまでの、アリアの足取りを知ってる?」

 ……ああ、そうか。
 クロスツェルが世界樹に記憶を読ませたのは、ルグレットに会う前だ。
 あいつが神殿で子供マリアに事情を話してないなら、知らなくて当然か。

「詳しくは知らん。数年前、死にたいようなことを言って自分自身の時間を戻した後、悪魔の力
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