第162話 復讐の顛末 前編
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正宗の言葉に蔡忠節は脱力したように崩れ落ちた。
「蔡伯節、お前は余の檄文を無視し皇帝陛下の勅に服すことなく大罪人! 死して皇帝陛下に詫びるがいい! この者を取り押さえろ!」
正宗は烈火の如き表情で蔡伯節をなじった。彼の言葉を発すると、近衛の兵士達が蔡伯節を乱暴に立たせて、正宗の面前に引き立てた。蔡伯節は死を間近に感じ、取り押さえる兵士達の拘束から逃れようとと無駄な抵抗をした。しかし、彼は為す術もなく正宗の前に突き出された。他の蔡一族は体を震わせ、蔡伯節のことを凝視していた。
「何故だ! 何故私がこんな目に遭わねばいけないのですか!?」
蔡伯節は事態を漸く認知したのか半狂乱になりながら正宗に慈悲を得ようと叫んだ。
「何故だと? 自らが招いた災厄と理解できないのか?」
正宗は無表情で酷薄な声音で蔡伯節に言った。
「私が車騎将軍に何をしたというのです? 静陽殿が車騎将軍のお命を狙ったのではございませんか? この私は委細知らなかったことでございます」
蔡伯節は情けない表情で必死に正宗に縋った。正宗は彼を蔑んだ目で見た。
「人とは窮地に立った時、こうまで差が出ようとはな」
正宗の目に憤怒の炎が燃えさかった。彼は薄汚いものを見るように蔡伯節を凝視した。
「黄承彦は蔡一族に連なる夫と我が子を守るため、彼らの両目を潰し両足の腱を切った。そして、蔡一族討伐に自ら参加して、己の手を血で汚した。夫から恨まれるやもしれんと理解しながらな」
正宗は淡々と話し出した。
「そして、蔡瑁の実妹は余の暗殺に失敗しようとも生き恥を晒すことを選ばず死ぬことを選んだ。命が惜しいなら、何故に私の檄文に呼応しなかった!」
正宗は哀しさと蔡伯節への怒りがない交ぜになった目で蔡伯節を睨んだ。
「蔡平! 蔡伯節を殺せ!」
正宗は怒りを抑えた声で蔡平に命令した。蔡平は剣を抜き放ち、蔡伯節の近づいた。
蔡平は剣を力一杯振りかぶり暴れる蔡伯節に切りつけた。だが、蔡伯節は即死することはなかった。蔡平の剣の技量では首を一太刀で切り落とすことは無理だったからだ。蔡平の一撃で中途半端に切りつけたことで蔡伯節は目を向きだしに悲鳴を上げ暴れ出した。しかし、彼を押さえ込む兵士達に抗うことができず苦悶の表情で身動き出来ずにいた。その光景を見ていた蔡忠節以下、蔡一族は恐怖の表情を浮かべ逃げようと暴れ出した。
「放せ! こんな真似をしてただで済むと思っているか!」
蔡忠節は焦った表情で叫び声を上げた。
「蔡平、どうした」
正宗が蔡平に声をかけた。
蔡平ははじめて人を斬ったことで動揺したのか苦しみもがく蔡伯節の姿を凝視していた。剣を握る手が震えていた。
「あの。あの」
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