第162話 復讐の顛末 前編
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族達に向けていた。
拘束される者達の中には子供もいたが表情を青くさせ体を震わせていた。蔡平の憎悪に満ちた視線から、自らがどんな目に遭わされるか幼心に理解できたのかもしれない。または、蔡一族の出身であることを理由に蔡平へ嫌がらせをしていたのかもしれない。大人達は子供達と違い蔡平に怒りを覚えている様子だった。今まで格下と思っていた相手が自らの上位にあることを受け入れることができないのだろう。
「車騎将軍、この者がどのような者なのかご存じなのか?」
蔡伯節は蔡平を見下した視線で一瞥すると正宗に意見した。これから処刑される立場の者の態度とは思えなかった。彼は命乞いより蔡平に対する正宗の扱いが気に入らない様子だ。現状認識のできない愚かな彼を正宗は冷めた目で見ていた。感情を感じさせない冷徹な視線を送った。
蔡伯節は自分に対して冷然な正宗に語気を弱めていた。彼の様子から今まで蔡一族が荊州でいかに隆盛を極めていたのかが推察できた。同時に蔡一族を生かす選択などないことが正宗にもよく理解できただろう。
「全て承知している。蔡伯節、余が蔡平を仕官させることに何の問題があるのだ」
正宗は蔡伯節を見た。相手に意見を許す気はないと彼の表情は語っていた。
「そ、そうですか」
蔡伯節は正宗が放ついい知れない覇気に怖じけづいているのか語尾が消え入りそうにな声で答えた。所詮、戦場を知らない資産家と戦場を潜り抜けてきた正宗では場数が違いすぎる。蔡伯節は腰砕けになり正宗から視線を逸らした。
「蔡平は此度の戦で功績を挙げた。朝敵であるおまえ達の住む村を攻めるに当たり、余に情報をもたらした。おかげで難なくおまえ達を拘束できた。この私の直臣にして、何ら不都合はない。おまえ達は余の発した檄文を無視し、降伏勧告すら無視した。おまえ達は万死に値する」
正宗は淡々と蔡伯節に対して罪状を述べると蔡平に目で合図した。
「車騎将軍、親を売るような此奴に直臣に取り立てるとは正気ではありませんな。此奴も蔡一族の血が流れているのですぞ!」
蔡忠節は正宗に意見した。彼は自ら処刑されると理解し、蔡平も道連れにしようとしているのだろう。正宗は彼の言葉に口角を上げ目を細め冷酷な笑みを浮かべた。
「お前が言うのか? 貴様達は県令を抱き込み殺人の罪を握りつぶしたな」
正宗は蔡忠節を睨んだ。蔡忠節は心臓を掴まれたような驚きの表情を浮かべ正宗を凝視した。蔡伯節も怯えた表情を浮かべた。
「お前は朝敵以前に死罪になる身だ。凌遅刑に処すところを、この者の手で処刑させるというのだ異論あるまい。だが貴様が望むなら凌遅刑にて処刑してやろう。地獄の苦しみを味わいながら死ぬがいい。安心しろ。県令は不正を告発し処刑する。朝敵に組みした官吏は天下に必要はない」
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