第162話 復讐の顛末 前編
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忠臣とは得ようとしても得難きものでございます」
「蔡平が身よりがないからか? あまり言い気分はせんな」
正宗は人の弱みを利用しようという伊斗香の姿勢に気分を害している様子だった。伊斗香は正宗の変化を気にする様子は無かった。
「利用するとは存外でございます。今後、蔡平も身を立てる必要がございましょう。そして、正宗様は有能な家臣を所望されているはず。その家臣が忠臣であればなお良いはず。正宗様と蔡平の出会いは天の配剤だとおもっております」
「私と蔡平を巡り合わせたのはお前であろう」
正宗は伊斗香を見て苦笑した。
「蔡平にご不満がございましたか?」
「蔡平は私が直々に仕官の誘いをするほどに教養を有しているわけではない。だが、惜しい人材ではある。剣の筋はお前の言う通り悪くはない。師匠に師事する機会も無かったのだろう。もし、蔡平が復讐を成した後、蔡平がやる気があれば化ける可能性は確かにある。私は蔡平に成長の場を与えてやることが出来る。将来のことを見据えれば人材は漁るだけでなく、育てることも必要だからな」
伊斗香は正宗の人材への考えを聞き感慨深げにしていた。
翌日、蔡平の住んでいた村を襲撃した。蔡平の手引きのより蔡一族は悉く拘束され、蔡一族の外戚関係にある者達も全て拘束された。元村の住人である蔡平が正宗側に居たために出来たことだろう。
正宗は蔡平の功績を表し略式だが彼女を朗官に任官したのだった。
正宗は本陣の最奥で椅子に座していた。彼の周囲には朱里、伊斗香、桂花、紗耶夏、慈黄、荀爽の五人がいた。拘束され正宗のいる本陣に連行された蔡一族の者達は正宗に怒りと不満の表情を向けた。だが、圧倒的な武力を率いる正宗に逆らっても無意味と自覚しているのか不満を口にせず押し黙っているようだった。
「蔡平!」
正宗が蔡平の名を呼ぶと本人がゆっくりとした足取りで本陣に現れた。蔡伯節以下他の蔡一族は見知った人物の名が呼ばれ表情を強張らせ視線のみを後ろに向けた。蔡平の姿を捉えた蔡仲節の表情は一際驚愕の色を見せていた。
蔡平はみすぼらしい格好ではなく深紅の生地の朗官の服装に身を包んでいたからだろう。彼女の腰には朗官に相応しい片手剣を差していた。全て正宗が彼女に与えたものだろう。
「清河王、お呼びでしょうか?」
蔡平はぎこちない所作ながら正宗に拱手し頭を下げた。目の前で正宗に片膝をつき拱手する蔡平を見る蔡一族の表情は困惑している様子だった。
「蔡平、天下の逆賊・蔡瑁の一族である蔡伯節とそれに連なる者をこの場で処刑しろ」
正宗は淡々と蔡平に命令した。蔡平は片膝をつきながら腰の剣に手をかけた。彼女の様子は微塵も戸惑いが感じられなかった。純粋な殺意を感じさせる視線を後ろ手に縛られる蔡一
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