第十五話 幼児期N
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
らしく、何度も確認するようにうなずいている。妹は俺から視線を外し、母さんの方へと向き直した。
「あのね、お母さん」
アリシアは、うきうきしたように言葉を続ける。その時、俺は記憶にある妹の言葉を思い出していた。そう、アリシアの言葉の続きは確か―――
『私、妹が欲しい!』
「私、お姉ちゃんになりたい!」
……そうだ、こんなふうに妹が欲しいと言って。…………あれ?
「ア、アリシア。その、お姉ちゃんになりたいの?」
「うん!」
『まさか、このような下剋上の仕方があったとは』
「にゃう」
そこ納得しないで。感心しないで。いや、あのちょっと本気で待って下さい。突然のことに頭がフリーズして追いつかないのですが。似たような感じだけど、なんか違うよね。 原作と違う言葉になったとか、そこかなり重要なんだけど。それよりも今の言葉の方が、俺としては衝撃が大きいんですけどぉ!
「わかったわ。……アルヴィン」
「え、あの母さん。俺も確かにアリシアのお願いは聞いてあげたいのですけど、俺にもこうプライドというものがありまして」
「今日から、弟になってくれる?」
「こんな展開聞いてないよ!?」
お兄ちゃんから、弟ですか!? 確かに産まれる順番は、双子だから僅差であることは間違いないけどさ。それでも、お兄ちゃんと弟の差は大きいよ!
『ますたー。妹の……いえ、お姉さんのささやかなお願いを聞いてあげましょうよ』
「にゃ……ぷっ。にゃうにゃー」
「完全アウェー! わかっていたけど、この家族アリシアに甘いよ! 俺も自覚あるけどさ!!」
というか、完全に面白がっているだろお前ら。リニスなんて噴出したの見たぞ。
えっ、というか何がどうしてこうなった。未来に立ち向かう不安とか、原作の運命を変えられるかとか悩んでいたじゃん。さっきまでのシリアスはどこにいったの!? 戻ってきて、シリアスさん!
「アルヴィン」
「母さん、俺…」
「どんなことも、自分が受け入れるだけの気持ちがあれば、前に進めるものよ」
「俺の目を見ながら、せめて言ってよ」
そんな悟ったように言わないで、母さん。今までどんな理不尽な目にあってきたのさ。やっぱりそれだけ、仕事が大変だったんだろうか。
母さんだって、よくわかんないけど現実を受け入れているんだ。この結果でアリシアが喜ぶのなら、俺だって覚悟を決めよう。大丈夫、俺が俺であることは変わらないさ。立場が変わっても、アリシアを守っていくことは出来る。
俺はぎゅっと拳を握りしめながら、アリシアに歩み寄る。母さんたちも、固唾を呑んで見守っている。さようなら、―――今までの俺。
「ア、アリシアお姉ちゃ……」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ