第十五話 幼児期N
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「コーラルってさ、内容は深くツッコんでこないよな」
『ますたーの深層心理はほとんどが混沌とした何かですし、深く聞いたら僕のAIが故障しそうで…』
「やっぱお前、俺への敬い度ゼロだろ」
主従関係を持ち出すつもりはないけど、せめてもうちょっと敬ってよ。俺一応マスターだよね。
そんな日常会話も終わり、俺はメモ帳や筆記用具を傍にあるテーブルの上に置いた。一度背伸びをすると、硬くなっていた身体が解される。ついでに首も回しておこう。
メモに書いていて思うけど、あんまりこれだ! という解決方法はやっぱり思い浮かばないな。思い浮かんでも、俺じゃあ出来なさそうだったり、失敗しそうな内容も多い。俺に出来る範囲でやれることを考えていかないといけない。
―――頑張るだけの価値は、絶対にあるはずだから。
俺なりに頑張ってみせると決めた。原作から逃げることをやめたんだ。俺が未来を変えることで、物語の歯車は確実に狂う。なら、もう堂々と原作に介入してやる。未来のそのまた未来にも、立ち向かってやろうじゃねぇか!
……と、かっこよく決めてみたが、ぶっちゃけると俺ができる範囲でが条件なんだけどね。そのせいで、未来が結局何も変わらなかったのだとしても……どうしてもこれだけは崩せない。俺の優先順位だけは絶対に変えられないからだ。
俺にとっての1番は、アリシア達と幸せに暮らしていくことだ。だから、原作介入も正直大したことはできないと思う。俺が怪我したり、もし死んでしまったら、みんなを悲しませてしまう。俺に何かあったら家族を不幸にしてしまうのだ。自惚れでもなく、それだけの愛情をもらっているとわからないほど鈍感じゃない。だから俺は、無茶だけはしたくない。
罪悪感はある。責任もある。彼女たちに幸せになってほしいとも思う。そのために頑張りたいとも思った。それでも俺は、自分の幸せを彼女たちのために捨てられるほど、お人よしではない。自分のことばっかり考える、薄情な人間だろう。
それに、俺が彼女たちのために頑張ろうと思った本当の理由はきっと―――
「ごめんなさいね、アルヴィン。待たせちゃったかしら」
「おまたせ、お兄ちゃん」
「ふにゃん」
お出かけ用の服装に着替えたアリシア達が、リビングへと入ってきた。俺は先ほどまで考えていたことに頭を振って打ち消す。うん、大丈夫。今はこっちに集中しよう。さっきまで考えていたことだって、運命の日が終わった後にじっくり考えればいいさ。
「そんなに待ってないよ。おっ、みんなおしゃれに決まってるな」
「でしょ! このお洋服ね、私のお気に入りなの」
褒められたのが嬉しかったのか、妹はスカートの端を手に持って、くるりと回ってみせる。アリシアの好きな緑色の大きなリ
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