月下に咲く薔薇 11.
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事ができよう。
「…これは、かつてない状況ね」スメラギも腕を組み、流石に策を講じあぐねた。「そうね、ゼロ。…取り敢えず、その会議室を立ち入り禁止にして、子供達が入れないようにしてくれるかしら」
『その処置なら終えている。見張りは藤堂に人選を任せたので、既に2人立てている時刻だ』
「仕事が早い。流石じゃないの」
ミヅキも、ゼロの手際と落ち着きに以前の冴えを感じ取った様子だった。
頭の回転は早く、あくまで舞台に立つ演技者のように他者と接し、真の感情を読み取らせないしたたかな指揮官。それが、ZEXISのメンバーが記憶しているゼロだ。
そこに、女性オペレーターの声が入り、ジェフリーが『うむ』と頷く声が入る。
『今、地上で測定したデータとクォーターで集積したものの照合作業が終了した』
「それで?」結果に興味津々のクロウは、ジェフリーを相手に結果の報告を急かす。
『平野部の標準値と同程度にまで下がった出現確率は、今も上がる様子がない。空間として安定し続けているのだ。アイムの言う実験とやらの影響はなくなったと考えていいだろう。我々SMSとしては、ZEXISによる24時間の監視は必要なくなったものと考える。以上だ』
「…にしちゃあ、後味が悪いな」
素直に喜ぶ事ができないクロウに、ジェフリーが『新たな問題が生まれたのだから、致し方ない』と即答する。『しかし、民間人が次元獣の脅威から解放されたと確認する事はできたのだ。後は我々の中だけで対処できると思えば、これも一つの前進だ』
「確かにそうね」スメラギが、腕組みを解いて姿勢を正す。「後は、地上にいる監視部隊に観測結果を報告したら、私達の任務は完了。戻るわよ、件のバトルキャンプに」
拠点への帰還を宣言されながらも、皆の表情はかえって固くなる。ジェフリー艦長の言う通り、バトルキャンプへの帰還と新たな戦いに臨む、は、この場合意味が同じなのだから。
「ロックオンとクロウは、これで終わりよ。お疲れ様」
スメラギの言葉に開放感を得、クロウは凄まじい疲労感を背負ってブリーフィング・ルームを後にする。
結局、アイムの思惑を計りかね、奴に対しバトルキャンプが如何に無防備であるかを確認しただけの会議だったように思う。
「さて、どうする?」
揃って中途半端な気分を抱え、通路に立ち尽くし次の行動を考えた。
「まぁ、俺としては」と言うなり、ロックオンが矢庭にクロウの右手を両手で掴み眼前で爪痕を確認する。「さっき右手を引っ込めた理由を、押さえさせてもらおうか」
「よせよ、わざわざ見るなって」
敗北の痕跡を照明の下に晒され、クロウは浅い傷から目を背ける。しかし、冷やかしとは思えない程、ロックオンの表情は恐ろしかった。
友人の左目は、傷自体ではなくもっと遠く、いや別の何かを見透かそうとしているよう
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