月下に咲く薔薇 11.
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あなただって、同じ敵から二度も組み敷かれたくはないでしょ?」
口調は穏やかなのに、内容が露骨な脅しを含む。
もし断ろうものなら、スメラギは本気で見張りの増員を決断するだろう。困難な戦場を、先読みによって支配する戦術予報士。クロウの幼稚な抵抗など、何手先まで封じられているかわかったものではない。
「いや、じゃなくて。いい。わかった! ロックオン1人ってところで手を打とう」
「大丈夫よ、いつまでもという訳ではないから」
「了解!」
妙に弾んでいるロックオン・トレーナーの声に項垂れ、『そうか』と呟くゼロの声に耳を立てる。
『今朝使用したという第4会議室だが、確認が取れた』
「残ってるか?」
ロックオンが、映像のゼロに身を乗り出した。
彼は、クランから花を預かり会議室に飾った本人だ。おそらくは、この中で最も報告に関心を寄せている人間にあたるだろう。
そのロックオンに、ゼロは『残っているという表現が適当ならば』と意味深長な前置きをする。『これが、その会議室の写真だ』
ゼロを映している画面が2つに分割され、彼の下に1枚の静止画像が追加される。
全員が注視すると、明らかにバラが置かれているとわかるデクスが2つあった。ロックオンが飾ったバラは花瓶に差した状態でそのまま残っている。花は意図的に追加されているのだ。
1輪づつ置かれたバラは、いずれも最前列のデスク上にあった。
「おい! この2つの席って…!」
クロウが喚くと、ロックオンとミヅキも言わんとする事を察してくれた。
ミヅキが「クランの席と」の名を出せば、ロックオンは「中島さんの座っていた席じゃないか!?」と後を継ぐ。
クロウも、2人の着席位置は最前列の窓側に廊下側と記憶していた。まさか、クランと中原の座っていた場所にバラを残して帰ろうとは。
「…何でこの2人なんだ!?」
クロウのみならず、ロックオンやミヅキ、そしてスメラギ達も、花を受け取った5人の顔を思い浮かべ、共通項の無さに閉口する。
ミシェル、アテナ、クロウ、そしてクランと中原。買い出し部隊に加わっていないアテナや、男性のミシェルやクロウなど、何かに共通する部分を探そうにも、必ず誰かが外れてしまう。
ただ。
照明が点灯しただけの会議室に、バラは文字通り花を添えていた。白い壁と天井、窓を隠す淡緑の調光ブラインドに白いデスク。機能を優先し病院の待合いにも似た味気なさを持つ室内に、ぽつりと鮮やかな赤を添える花が3本も加わっている。
それだけで、写真から受ける印象は激変した。凄惨な市街地の光景や空さえ焦がす炎を見慣れてしまうと、写真に映る室内は尚の事安息を与える光景として受け止めてしまう。真っ赤なバラがそっと置かれているだけの写真から、人の悪意や痕跡が映っていると、どうして未見の侵入者に憤る
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