月下に咲く薔薇 11.
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は奴に組み敷かれて身動き一つ取れなかったんだぜ」
「あら、組み敷かれたの?」
隣でかくっと崩れるロックオンとは目を合わさず、クロウはスメラギの問いに小さく首肯する。
「まさか、他にも整えたい条件があるのかしら」スメラギが、クロウの全身を上から下に眺め下ろす。「忘れないで。間接的に相手を追い詰めたり搦め手を使うのは、あの男の常套手段よ。最短コースを通らないと見せかける挙動自体が、偽装である可能性もあるの」
「…これを疑ってあれを疑って。なんか、段々とややこしくなってきたな」
顔をしかめるロックオンに、「仕方ないわよ」とミヅキがスメラギのフォローに入る。「私達はこれまで、アイムの分析を避けてたんだから。ああいう底無しの二枚舌が相手だと、土台が固められないでしょ。『謎の男』でしかないのよ、今でもね」
「ならば訊こう。不確かな情報が多いと知りながら、何故アイム・ライアードの目的は変更されたと解釈している?」以前の硬質な物言いに戻ったティエリアが、スメラギやゼロ、ジェフリー、そしてミヅキを見比べた。「それは、実験なるものの拡大解釈にも等しい。クロウ・ブルーストの命を奪う以上の価値が実験にあると言っているのと同じだ。あり得ない!」
『そうだな。今のティエリアの指摘を否定する事も、我々には難しい』それまで聞き手に徹していたジェフリーが、静かに割って入る。『我々はかつて、幾度もアイムの虚言に翻弄されてきた。言葉は事実を伝えず、真に受けた代償をZEXISのメンバー個人が戦いの中で支払った例もある。痛みを伴う経験だ。しかし、私が記憶している限りに於いても、クロウに繋がる奴の目的がブレた事はかつて一度もなかった。…諸君、今回の騒動からアイムの意図を探るには、更に多くの情報を集める必要があると私は考える』
直後、ロックオンが挙手をした。
「その参考になるかどうかは保証できなが、俺からも少し報告したい事がある」
いよいよバラの話に触れるのか。
スメラギが「いいわよ」と許可すると、ロックオンは今朝クランが手にしていたバラの話から始め、2本目がアテナのナイキックに置かれていた事、そして3本目と思われるバラをクロウが踏みつけ転倒した事にも触れた。
「それって、あの真っ赤なバラの話でしょ?」
顔を歪め、ミヅキが詳細に露骨な不快感を示す。
「いいねぇ。目撃者がいると話が早い」
クロウが頷いて肯定すると、他のメンバーの視線がミヅキに集まった。
「ええ。実は私も見てるのよ、その花。買い出しの打ち合わせの時、第4会議室で」
直後、何人かの小さな声と衣擦れの音がした。
さもあろう。もし突然現れたり消えたりするバラがアイムの仕業なら、あの男は今朝バトルキャンプ内を自由にうろついていた、という事になる。当然、聞き流して良いレベルの話ではない。
「その
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