月下に咲く薔薇 11.
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ロの姿もあった。
大塚長官、ロジャー、万丈、隼人など、ZEXIS、ZEUTHの頭脳派もクロウの話を吸い上げたいのだろうが、映像を見る限りゼロの側にはいない。その上、ブリーフィング・ルームにその身を置いているのは、スメラギ、ティエリア、ミヅキの3人だけと極端にメンバーを絞り込んである。
スメラギはそれを、「報告を優先した結果」とした。「まず、あなたの話を聞きたいの。クロウ。下で何があったのか、まずそれを教えてちょうだい」
「ああ」
クロウは、ブラスタのコクピットで人影を捉えたところからオズマ達がやって来るまでを時系列に説明した。アイムの言動については、特に淡々と並べるに留める。
報告の基本だが、クロウは軍人上がりとして冷淡に事実のみを抜き出す事には長けている。ここで削り取られるのは、実験の成功を強調するアイムの様子と、手首に爪を食い込ませた感情的な何かについてだ。
聞き手も心得たもので、アイムが絡んでいるが故に言葉への反応を制御し聞いている。指揮官の情報吸収は現象の解釈に直接影響するだけに、慎重なのはいい事だとクロウは思う。
やはりスメラギ達も、実験と称するものが失敗に終わったとの推測を示した。決め手は、ZEXISが得たものの多さだ。
市民の反発をZEXISに誘導する意図さえあるように仄めかしておきながら、ライノダモンの消失によってそれは実現不可能な企てと化した。犯人を取り逃がしたとはいえ、次元の歪みさえ今はなく、安全宣言も出してやれそうなこの状況からアイムが何を得るというのだろう。
クロウが目撃した亀裂の走る歯の話も、失敗という推測を強く後押しする。
しかし、クロウにとって想定外だったはその先だ。もし、同じ現象を再び起こす意図がアイムにあるとしたら…。
指揮官達の脳内で、再実験の可能性とVX利用の可能性が突如結びついたのだ。
「へ?」
最初は発想の飛躍と呆けていたクロウも、次第に仮説の説得力に顔色をなくす。
『難しいものは何一つない』まとめにかかるゼロの話を、クロウは小さく口を開いて聞いていた。『実験が失敗したと確信したアイムは、その結果を糧により良い方向へと修正すべく、VXの力を利用する事を考え始めた。自分を頼るように、か。どうやら、クロウを殺している場合ではなくなったようだな』
「そういう意味だったのか…?」
繋がりすぎて、腑に落ちた。
確かに再実験を行うつもりなら、条件づけの変更は必須だ。その為、ブラスタに搭載されているVXに目をつけるという発想もわからなくはない。スフィアなるものの可能性に最も精通しているのがアイムなのだから、手練手管の限りを尽くしてクロウとブラスタを自陣に引き込む算段を巡らせるのは、なるほど有りか。
「だが、それならさっきの機会を逃す手はないだろう? ブラスタは目の前、俺
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