月下に咲く薔薇 11.
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失って以降のものか。
クロウの中で、赤い何かが掠めてすぎた。
なるほど。その話ならば、むしろ伝えておく必要すら感じる。
「ロックオン。3本目のバラ、下の建物に出たぞ」
「本当か!?」流石に、相手の足が止まる。スナイパーが素早く振り返ると、彼の表情には隠しきれない驚きが満ちていた。「もしかして、お前宛かよ」
「そいつが結構微妙なんだ。しかも、証拠として持ち帰ろうにも、あった筈のところにない。今朝のお前の話みたいにな」
「おいおい…!」
「ルカが現場の写真を撮っているから、踏みつけた跡だけは証明できる。だが、それだけだ。問題の現場に絶好のタイミングで落ちるなんざ、出来すぎだろ。…何かあるぞ、あのバラは」一拍置いてから、クロウは立ち止まっている相手に行く先を指して見せる。「ロックオン、折角お前もブリーフィング・ルームに入るんだ。ついでに少ししゃべっていけよ」
口調は軽いが、クロウ自身は至って本気だ。
勿論、ロックオンもクロウの意図するところは理解している。ただ、見張りの顔から一転、事が自分にも及んでいると悟った男は、困惑げに深い溜め息をついた。
「この展開は、正直意外だったぜ。お前1人が絞られるだけかと思ってたのに、今朝の時点で俺も説明する側の人間かよ」
「そうらしいな。俺は、バラのおかげで大迷惑。あのストーカー野郎も、あんまりいい顔はしてなかった。俺達の間に邪魔者が割り込んだ、みたいな言い方をしていた…ような」
「ちょっと待てよ!」突然、ロックオンの声が裏返った。「お前は、あの嘘つき野郎の言う事を真に受けて帰って来たのか?」
「あ…」
ぽっと呟くクロウに、ロックオンが呆れて首を左右に振る。
「下で、それだけ条件が揃っていたんだ。そもそもアイムの仕業だと疑うべきところだろうが。奴は神出鬼没だし、1本目のバラのおかげでミシェルとクランの間が気まずくなったんだぞ」
「ご尤も」
もし、アイムがバトルキャンプに出入りしているなら由々しき事態だ。クロウは再び歩き始めると、報告の必要性に唇を強く引き結ぶ。
「そうそう。お前は、自分で思っているよりお人好しなんだ。その辺りのところを自覚しておかないと、これから益々奴に手玉に取られるぞ」
「冗談じゃねぇ。俺を振り回すのは借金の額だけで十分だ」
「ああ、うん。まぁ、そうなんだが。…ぶれないな、お前は」
ロックオンが、ようやくここで笑顔を垣間見せた。
大きく息を吸い、クロウは意識してゆっくりと吐き出す。
「いいタイミングでの忠告、ありがとよ。おかげでいい報告ができそうだ」
ブリーフィング・ルームの入り口に、2人で立つ。
決意の顔で中に入ると、クロウを待ちかまえていたのは、トレミー搭乗のメンバーだけでなく、モニターに映るジェフリー艦長、そしてバトルキャンプにいる筈のゼ
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