月下に咲く薔薇 11.
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「ブリーフィング・ルームに直行か」
クロウもしおらしくそれに従い、「そうだ」と答えるロックオンについて行く。
「下で何があったのかは、しっかりしゃべってくるといい。だがな、それが終わっても、お前は俺からは解放されない。しばらくはつきっきりだ。ま、再教育ってやつだな」
クロウの顔を見ずに、先を行くロックオンが笑えない決定をさらりと伝える。まるで、軽口でも叩くかのように。
「再教育?」随分と下に見られた言葉に、クロウは渋面のまま隻眼の男の背中へと近づいた。「俺のしつけからやり直そうってのか!?」
「ああ、そうだ。…当然だろ? 見習いが勝手にバカやったんだ」
ロックオンは、殊更「バカ」の部分を強調した。
「はは、そうきたか…」
だから殴らなかったのだ、とクロウはようやく悟る。
見習い志願などという乱暴な話は、そもそも謎の多いソレスタルビーイングにつきまとう口実としてクロウ自身が持ち出した出任せだった。いい加減古い話の方に入ると思うが、良くも悪くも相手の中にも生き続けているらしい。
ライノダモン絡みの騒動故、アイムがショッピング・モールに現れる可能性は最初からゼロではなかった。結果としてアイムと1人きりで会い、状況の激変にも立ち会ってしまった。そんな野良犬に、スメラギはトレーナーをつけなければと考えたのだろう。
アイムを刺激し今件絡みでの再訪を確約させてしまったのがクロウなら、戦術予報士に無期限監視の口実を与え続けているのもクロウだ。完敗というより他にない。
「へいへい。見習いとして、安く従わせてもらいますよ、って」
「その心掛け、まさか口先だけで終わらせないよな」
「…えーっと、もう少し信用してくれると有り難いんだが」
ロックオンが、いつになく絡んでくる。クロウは、つい後ろから右肩に手をかけた。
「どうしてそうなったのか。胸に手を当てて、よぉーっく考えてみろ」
その右手の甲を、歩き続けながらも前を行く男の左手が抓みにかかる。
「いっ!!」
ロックオンが摘むほんの数センチ離れたところに、アイムの残した爪の痕があった。クロウは、咄嗟にしまったと思う。
だが、右は隻眼のロックオンにとっては死角領域。幸い、にはあたらないが、クロウの手傷を彼が発見した様子は見受けられなかった。
元々、見られて困るという程の傷ではない。ただ、ものとしての意味合いが悪いのだ。宿敵との1対1で破れた結果、なのだから。目前にいるのが殊の外心証を害した友人なので、更につつかれたくはないとの思考が働いてしまう。
手首をそっと引っ込め、あくまでさりげなさを装った。
「ん? どうした?」
それでも、ロックオンはクロウが何かを取り下げた事を巧みに察知する。
研ぎ澄まされた勘に、クロウはぎくりとした。この冴え方、もしや右目の視力を
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