第1章:平穏にさよなら
第9話「お見舞い」
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....。」
「沈黙は肯定と見なすよ?」
「...そうですよ。私は、転生者です。」
随分とあっさり認める志導さん。
「今まで原作に関わってこなかったから分からなかったよ...。」
「当然ですよ。だって私、関わる気なんてないですから。」
きっぱりと言ってのける志導さん。
「...理由を聞いてもいい?」
「先に一つ聞いていいですか?」
私の質問に答える前にそう言ってくる。
「なにかな?」
「あなたはこの世界の“原作”をどうしたいと思ってますか?」
「どう...したい?」
質問の意図が一瞬分からなかった。
「どこぞの二次小説のように、原作よりも幸せな結末にしたいとか、そういうのです。」
「私...は....。」
どうしたいのだろう。私が関わるようになったのは巻き込まれただけだし、別段そう言うのは考えていなかった。ただ、その場その場で感情の赴くままにって感じにしか行動していなかった気がする。
「...私は、小学校入学直前まで、この世界を心のどこかで現実として見ていませんでした。...ただのアニメの世界。物語の世界だと、タカをくくっていました。」
「.....。」
「どんな事もどうとでもなる。“原作”の知識があれば最悪な事態は回避できると、そう思っていました。....両親がいなくなるまでは。」
志導さんの独白を黙って聞く。...聞いておかなければ、いけない気がしたから。
「...両親がいなくなって、初めて私はこの世界がれっきとした現実だと...世界はそう甘くはないのだと、思い知らされました。」
「いなくなったって...。」
昨日も言っていた事だけど、詳しくは知らない。だけど、唐突の事だったのだろう。
「お兄ちゃんに励ましてもらえなかったら、私はずっと打ちひしがれていたでしょう。...だから、もう私はこの世界がアニメを基にした世界だとは思ってません。そんな事を思ってもなんの得にもならないと分かりましたし、何より救ってくれたお兄ちゃんに失礼だと思いました。」
「......。」
何とも言えなかった。多分、私もこの世界を現実として見ていなかった。...と、言うより、自身が転生者だという事で特別なんだと思っていた、浮かれていたからその言葉が心に響いたのだろう。
「...聖奈さんは、どうお考えですか?」
「私....私..は....。」
言葉が出ない。“記憶を持って転生する”事の重さを理解させられて、ひどく動揺していた。
「っ.....少し、考えさせて...。今まで、その場の感情の赴くままにしか行動してなかったから、そういう事、考えたことなかった....。」
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