第八十六話
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ごとき重荷を背負わせる。まるでただのプレイヤーだった者たちを、洗脳するかのように殺人プレイヤーに変えていった、あの殺人ギルドの首領を思わせるその手口に……知らず知らずのうちに、俺は奥歯を噛み締めていた。この怒りをどこにぶつければいいのか、AA−12の銃口を銃士Xから下ろすと、さらに質問を続けていく。
「アイツって……誰なんだ」
その質問を銃士Xにぶつけるとともに、俺はあの殺人ギルドの首領の姿と、《ゼクシード》を殺害した《死銃》が言い放った、『it's show time』――という合い言葉が脳裏に浮かぶ。銃士Xは俺の眼光にすら怯えながらも、小さく首を横に振った。
「わ、分からない……わたしと一緒で、この灰マント着てたから……」
《ゼクシード》を殺害する時から一貫して着ている、あの灰マントだけでは正体にまでは至らない。とにかくこの情報をキリトに伝えなくては、と思う最中、銃士Xがこちらを見て表情を恐怖に歪める。いや、俺ではなく視線はさらに向こうを――
「ッ!?」
銃士Xの悲鳴を伴った恐怖の叫びと、突如としてその空間に現れた殺気。反射的に振り向きながらAA−12を構えるものの、こちらが状況を認識するよりも早く、二発の銃声がスタジアムに響く。
「くっ……?」
発射されたらしい銃弾は肩に当たったものの、軽装のこちらからしてもダメージはない。すぐさまこちらも反撃の一射を放とうとするも、身体に力が入らずに膝から崩れ落ちる。経験したことのある身体の痺れ――いわゆる《麻痺》の状態異常が俺を襲っており、先の弾丸には麻痺の状態異常が付与されていたらしい。
それでも何とか頭部だけは動かすと、発砲したプレイヤーのことを確認する。倒れた俺を見下ろす形になるそいつは、灰マントとドクロの仮面をした、一度廊下ですれ違ったプレイヤー。キリトと俺の両者に接触し、あのデスゲームのことを問いかけてきた……真の《死銃》。
「…………」
《死銃》は何も言わずに俺のことを通り過ぎると、同じく麻痺弾を撃たれて行動不能になっていた銃士Xの方へ向かう。その手には《黒星》が構えられており、奴が何をしようとしているかは――
「やめ……」
「所詮、あの女の、戯言、か」
俺の制止の声に耳を貸すことはなく。《死銃》はそう呟きながら、倒れた銃士Xの近くに落ちていた《黒星》を踏み潰し、その手で死者を悼むように十字を切る。しかしてその行動と結果は、悼むなどという行動とはまるで正反対であり――容赦なくその《黒星》の引き金は引かれた。
「うぁ――」
銃士Xは何も言い残すことはなく、あっけなくそのアバターは崩壊していく。本当に……本当に一瞬で、何事もなかったかのようにあっさりと。そして《黒星》の引き金を引いた《死銃》当人は
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