第八十六話
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《FRAG-12》は連鎖的に装甲車の底面で爆発、そのまま爆心地に更なる弾丸が発射されていった結果――一際巨大な爆発が起こっていき、装甲車が浮かび上がっていき、完全に俺に向かってその底面を晒す。俺を狙っていた筈が、誰もいない空中に放たれる機銃を見ながら、《AA−12》の真骨頂たる機関銃のようなフルオートをもってして、さらに《FRAG-12》を装甲車の底面に連射する。
いくら装甲車といえども底面も装甲に覆われていることはなく、《FRAG-12》の直撃には耐えることは出来ず――直撃、爆発、炎上――映画のようにガソリンにでも引火したか、装甲車の内部から《FRAG-12》のものではない爆発が響き渡る。その爆発を近くにあった巨大な瓦礫に隠れてやり過ごすと、耳をつんざくような爆発音と閃光が周辺を支配した。
「ふぅ……」
見るも無惨な光景になっているだろうが、一応装甲車に乗っていた相手を倒したか確認すると、そこには予想通り――予想以上の無惨な光景が広がっていた。現実で目の当たりにしたとしたら、消防車ではなく先にテロ対策課を呼びそうな光景とでも言うべきか。
それでもプレイヤーがキルされた証である、ALOでいうところのリメインライトは残っていたので、どうやらプレイヤー自体もこの世界から退場したようであった。さらに観察するとその印は二つ残っており、装甲車の運転と機銃の担当で手を組んでいたのか、と今までの行動に納得する。
とにかく装甲車の走る音といい爆発音といい、そもそもこの道路という場所といい、何にせよこの場所は目立ちすぎる。近くのビルの一室にでも隠れて、休憩がてら次のサテライト・スキャンまでやり過ごそう……と考えていると――
「……!」
――途端に殺気が俺を襲う。気配は上空から……狙撃ではなく人の気配であり、反射的にその場を飛び退くと、今まで自分がいた場所にしっかりと弾痕が付いていた。
「オッケーオッケー、今のを避けるなら合格だぁ」
先程、装甲車の機銃が空へと発射された時、空中に人がいるはずもない――と考えたが、その声は確かに空中から響いていた。その声のする方向を向いてAA−12を構えると、確かに男が一人、空中を自在に歩いているように見えた。
……いや、空中に人間が歩いているなど、この世界では全く持ってナンセンスだ。よくよく観察してみれば、その男は片腕からアンカーを伸ばしており、そのアンカーをビルの屋上にくくりつけているに過ぎなかった。装備もホルスターに込められた拳銃と、煤に汚れた薄汚いマント――少し焦げているところを見るに、どうやらあの装甲車に乗っていたらしい。爆死する前にそのアンカーで脱出していたか。
「いい眼光だ。俺の名はサティという者だが、君の名前は?」
「……ショウキ」
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