月下に咲く薔薇 10.
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上がる。「艦に戻るぞ。全員…」
「ちょっと待ってくれ」
クロウは慌てて、床を眺めて回る。足下から次第に範囲を広げ、かなり広域に探している筈なのだが、何故かあるべき物が何処にも無い。
結局、踏みつけた場所と思しき所に僅かな汚れを発見するのが精一杯だった。
「消えた…?」
1輪のバラが突然視界から消え失せる。まるで、ロックオンの話そのままではないか。
しかも、踏み潰された無惨な花だ。花びらの1枚や2枚取れてしまったとしてもおかしくはない。それが、茎も取れた花びらも一緒になって消えてしまったのだから、いよいよ首を捻りたくなる。
ライノダモンと同じ場所に行ったのか、或いはわざわざ持ち帰った者がいるのか。どちらも俄には信じ難いが、確かに花は消え失せていた。
脳内で激しく警鐘が鳴る。クロウは帰りかけているルカを呼び、汚れが残る場所の写真撮影と念の為の計測を依頼する。
ルカは一度だけ不思議そうな表情をしたが、「いいですよ。ここですね」と素直に聞き入れてくれた。
「早くしろ」と手招きするオズマに従い、ルカと共に歩き出す。そしてクロウは、報告の文面を考えながら手動ドアに手をかけた。
エクシア、ガウォーク形態のメサイア2機が上昇を始めると、クロウもブラスタを離陸させ遙か頭上のトレミーを目指す。
「こいつも、ペナルティのうちなのかもな…」
答えにくい内容ばかりが積み重なってゆく場面を想像し、クロウは少しげんなりした。尋ねたい皆の気持ちもわかるが、答えが欲しいのはこちらも同じだ。今夜は徹夜になるかもしれない。
勿論一番の気がかりは、アイムと奴の言う実験についてだ。ライノダモンが出現しかけたまま消失した事は過去になく、アイムが結果に不満を抱くのなら再実験は必ず行われるだろう。
しかも、それだけではない。こうも目につく赤いバラ、あの花の謎に思考が及ぶと脳の一部で混乱が起きる。提示されるものは少なくないのに、インペリウムの件と同様、不明な点の多さに驚く。まるで、アイムのおしゃべりでも聞かされているようだ。
クロウには、花の贈り主に言いたい事が2つあった。1つは、もう二度とZEXISに関わるなという要望。もう1つは、あの花を踏んでしまった事でアイムに取り押さえられた、その事実に対する目一杯の不満だ。
− 11.に続く −
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