月下に咲く薔薇 10.
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鬼より怖い。渋々クロウは、まずこの場でアイムと望まない再会をした事について触れた。
別に隠したかった訳ではない。そもそも、アイムの言動を口頭で説明する事は非常に困難なのだ。全てに「これは嘘かもしれない」と添えていたのでは報告にならないし、聞き手も混乱してしまう。
クロウが言い淀んでいた理由もそこにあり、幸いオズマはすぐに口頭の危うさを理解してくれた。
アイムの言動を伝えるのなら、略式や口頭は御法度だ。箇条書きによる文章報告が最適なのでは、とさえクロウは思っている。
「忍び込んでいたんですか? アイムが!?」
手を止めずに驚くルカへ、クロウは「いや」と否定から入る。「どちらかというと、ブラスタの接近に気づいた奴が、俺に尾行をさせてここまで誘い込んだってとこだな」
「その為のライノダモンという事もある」布飾りと照明だけになった吹き抜けを仰ぎ、刹那がぼそりと自説を述べる。「クロウ・ブルースト。お前は、それが罠だと知りながら相手の誘いに乗ったのか?」
「いや」クロウは再び否定した。「ライノダモンについては、もう少し背景がありそうだ。ただ、罠を承知で、という部分はイエスだな。それは、俺の行動として俺が断言できる」
「得意げに言うんじゃない!」激高したオズマが、勢いからクロウの胸ぐらを掴んだ。「アイムについての報告は後でいい。だがな、これだけは覚えておけ! 狙われているところを逆手に取るようなやり方は、命を投げ出す事と同じなんだ!! 今度そんな真似をしてみろ、ダイグレンの指先に括りつけて戦場のど真ん中に放り出すぞ!!」
「おいおい…、そいつは勘弁してくれ」怒鳴られた通りの光景を想像し、クロウはぞっとしながら両手首を左右に振る。「俺が軽率だった。これからは自重する」
「信じていいんだな」そう言いながら、オズマの手が掴んだ服をようやく離す。
この男なら本当にやりかねない。心の片隅で、クロウは思った。
ダイグレンとは、ZEXISが獣人から強奪した陸上用歩行戦艦の事だ。現在は、ダヤッカやニア姫達がブリッジに詰め、ZEXISの3母艦の中の1隻として機能している。
オズマの言う指とは、歩行戦艦に取りつけられている2本の腕の先端部分を指す。掴む、投げるなど非常に器用な動作をこなすが、長い腕の先端だけに、戦闘時は頭上から足下まで激しく振り回され、ダイグレンが走る時は始終半円を描く過酷な場所でもある。
オズマらしい脅しであり、またその言い回しには彼の様々な感情が溢れていた。クロウの焦りや苛立ちなど、お見通しというところなのだろう。
「隊長」計測器の蓋を閉じ、ルカが近づいて来る。「取れるだけのデータは採取しました」
「後は、クォーターに戻ってからか」
気遣わしげにクロウを見上げてから、ルカが「はい」と返事をした。
「よし」オズマの右手が
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