月下に咲く薔薇 10.
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界を掠めたかと思いきや、アイムの姿は突然消えてしまった。手動のドアが開いた形跡もない。
他の建物に移動したのかとも考えたが、目前から逃しているのに追いつける筈もないと諦めた。アイム・ライアード、どれだけこちらの神経を逆撫ですれば気が済むのか。
程無くして、窓外に小さな光の粒が現れた。青緑色に見えるのは、それがソレスタルビーイングのガンダムが放つGN粒子だからだ。建物からやや離れた位置で上から下への奔流を成すので、屋内からは真冬の花火に見えなくもない。
既に、着陸しているブラスタも発見している事だろう。実際に、クロウは多くを目撃した。これから、今降下した仲間達、そしてスメラギやジェフリー達にと、同じ説明を繰り返す必要に迫られそうだ。
その為には、アイムがクロウの足下で何を見たのかを確認しておかなければならないのか。
照明が床の全てを照らす中、クロウは視線を落とし、そこで我が目を疑った。
落ちていたのは、1輪のバラだ。それも、棘がついたままになっている茎の短い真っ赤なバラだ。花の形は見る影もなく、無惨に踏みつけられた痕跡がある。
「…俺にまで飛び火か」
考える間もなく手動ドアが開き、ノーマル・スーツを着用した刹那、オズマ、そしてルカが建物内に入って来た。ルカだけがそこで立ち止まり、小さな計測器で手際よく吹き抜けの測定を始める。
オズマと刹那が、明るい店内でクロウと目を合わせた。下がったバイザーは、異変の確認に訪れた2人の表情をはっきりとクロウに伝えてくれる。
ライノダモンが消え失せたというのに、揃って厳しい眼差しだ。当然と言えば当然、かもしれないが。
「クロウ」近づきながら、オズマが大声でクロウの名を呼ぶ。「一体何があった?」
「話せば長くなりそうだ。ところでお2人さん」吹き抜けの上方を右手で指し、クロウは返答よりも質問を先に持ち出す。「次元の歪みはどうなってる? あのライノダモンは、俺が見ている前で突然消えちまったんだが」
「そうか」自身の目でも状況を確認し、オズマはまずその一言だけを呟いた。「今、その歪みは正されている。同じ場所に再び歪みや裂け目が現れる可能性をクォーターで割り出しているが、数値は他の平野部と同程度まで落ちた」
「要するに、一度歪みが出た場所として避けて回る心配はない、と」
「ま、そういう事だ。もし、ルカの現場確認作業でも問題無しという事になれば、明日にはここも朝から平常営業できるだろう」
「吉報じゃないか。今のを聞いて、俺の元気も倍増だ」
明るく振る舞ったつもりだが、オズマは目敏く、クロウが着ている借り物の服に気がついた。あからさまに付いている胸の汚れを、左手の甲が軽く叩く。
「何だ?これは。暗がりで転んだとか言って適当に誤魔化すつもりなら、俺は黙っちゃいないぞ」
怒ったオズマは、
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