月下に咲く薔薇 10.
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が奴の放つ嘘だとしたら、1対1でクロウに勝ち目などある筈もない。
誘いに乗ってしまった事への後悔は無きにしも非ず。但し、アサキムは言っていた。スフィア・リアクターをパイロット単独の状態では刈る意味がない、と。
クロウの命を狙っている筈のアイムが、わざわざブラスタから降ろし建物内へと導いた理由が何かありそうだ。それが明らかになっていない今、アイムは最も重要視している目的を未だ果たしてはいない可能性が高い。
あるのか。アイムには何も与えず、こちらだけが実験なるものの詳細、せめてその端でも掴み取る方法など。
「ったく、ろくでもねぇ…」
嫌な事を思い出し、一旦息を整える。
実験。クロウが自ら言い出したものとはいえ、つくづく嫌な響きだと思う。エスターが何処の生き残りなのかを知った時と同じだ。記憶の淀みにアクセスする一つの単語が、傷を広げながら触れたくはない過去の物置に起床ベルを鳴らしてしまう。
「おや、揺れていますね」
薄暗がりの中、鉢植えの向こうにいる筈のアイムが、さも嬉しそうに呼びかけてきた。相変わらず、クロウの心的状況には並々ならぬ関心を寄せているところは最悪で、更に気分が悪くなる。
「結局、それも目的の一つなんだな。俺に用があるなら、直接来い!!」
「では、今からあなたの側に参りましょう」
突然、恐ろしくあっさりとした返答の声が1階に響いた。
まさか、言葉の意味をそのまま受け止める気があろうとは。
咄嗟に場所を変えようとし、動いた右足が何かを踏む。パキッともクシャともつかない音が靴の下から聞こえたと同時に、何かを潰したとの実感に足先が固まる。
柔らかいようで固い、草などが持つ特有の感触だ。靴を履いていてもそれはわかる。
何を潰した? 鉢植えが倒れているのか?
植物を踏むと靴裏が滑る。罪悪感も重なり、瞬時に足を上げて別な場所に下ろそうとした直後。左足にあっさりと足払いをかけられた。しかも、背後からだ。
一旦体が右に傾き、立て直す事もできないままやや前方へと倒れ込む。頭が無事だったのは、クロウが重ねた鍛練の賜物だ。
それでも、不意を突かれ俯せのままアイムに制圧されてしまう。
「なるほど。筋肉の弛緩を基本とした軍隊格闘術ですか」システマ特有の癖を読み取り、アイムがほくそ笑む。「しかし、万能ではありません」
「ああ。そうやって勝った気でいるんだな。だが、そもそも生身の俺とやりあうのは本意じゃねぇ筈だ」首を左横に向け、クロウも減らず口を叩く。「実験とか言ってたな、アイム。成功だァ? 笑わせるぜ。なら俺は、嘘つきの逆を言ってやる。本当にあれで成功なのか?」
「ええ。先程説明したではありませんか。今のあなたの力では干渉する事のできない現象が成立した、と」
言葉では肯定しているのに、アイムの声が次第に怒
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