月下に咲く薔薇 10.
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問いかけてから、馬鹿な事をしたものだと自身の甘さに腹が立つ。そもそも相手は、虚言家という名を持つ男ではないか。発する言葉の多くには、悪意か嘘、或いはその両方が必ず含まれている。
話しかける事、そして奴の話を聞く事には暇つぶし程度の価値さえない。それでも、クロウがアイムの前でライノダモンの件について触れたのは、僅かな、ほんの僅かな違和感を覚えたからだ。
二枚舌という生物としてクロウの前に立つこの男が、2人きりの再会を歓迎しているのは本当だろう。『揺れる天秤』なるスフィアの覚醒を望みつつ、一方でアイムは、ストーカーのようにつきまとってはクロウの命を狙い続けている。
しかも、ただ殺したいのではなく、クロウの動揺を誘う奇癖が随所に見受けられた。もし、今回の騒動がアイムの仕業なら、ライノダモンの全身を瞬時に出現させないのはその奇癖に理由の一端があると思われる。
つまり、ライノダモンを気にかけクロウがたった1人で様子見に出た時点で、アイムは目的の何割かを果たした事になる。それは喜びたくもなろう。
しかし。
今までアイムが行ってきた残虐非道な行為の数々を記憶している者ならば、全員がこう思うに違いない。「余りにもぬるい」と。
黒の騎士団を慰める機会を逸してしまったのは事実である上、2隻の母艦と20人以上のパイロット達が24時間監視なる任務に就く事となった。バトルキャンプとショッピング・モール上空。体よくZEXISを2つに分断するつもりなら、成功という事にはなる。
だが、損害でもなければ弱体化もしていない。ZEXISは、全体として未だ健全に機能し続けている。その事実が重要なのだ。
何より。あのライノダモンから逃げのびた者達がいるという報道が、インペリウム帝国にプラスに働くとは思えなかった。適切な避難誘導が功を奏し、死者どころか怪我人1人出していない結果にクロウが満足している事は事実で、ここにも揺らぎが入る余地など皆無だ。
アイムは虚言家だが、彼自身は既存の枠に収まらず更に奇っ怪な外枠を自ら設けその上に立っている。正気の中で凶行を選んだアサキムとは異なり、奴の心中は正気と狂気の狭間にあるといってもいい。たとえ金を積まれても覗きたくなどない禍々しい境地だが。
今のクロウには、砂粒程の興味が湧いていた。わざわざブラスタのモニターに映って見せ、自身とライノダモン、そしてクロウを一堂に会するよう仕向けた理由とやらが気にかかる。
「お得意の嘘で何か言ってみろよ」沈黙するアイムに腹を立て、クロウは挑発に乗り出した。「浮いてるだけで何もしないライノダモンの口。そういうものでホラー・ショーでもやりたいのなら、てめぇらがハロウィン・パークでも作ってその中だけでやっとけ。どういう実験なのかは知らねぇが、インペリウムの野望は俺達が必ず叩き潰す!」
「
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