第六話「絶対神速」
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っ込んでいく。さすがに地上用のISでもこの速度で移動することはできるはずもない。
射撃に当たるのを覚悟で俺は突っ込んだ。
「は、早い!?」
セシリアは、突然肉眼ではとらえにくくなった狼の姿に戸惑いながらもライフルで射撃する。しかし、彼女の射撃能力では彼に標準を捉えることはできずにいた。
後ろへ回り込みつつ徐々に距離を攻め続ける俺に、セシリアには焦りが見える。
流石に間合いを詰められたセシリアに反撃の手段などない。俺は攻撃を手を緩めずに零で斬り付ける。
しかし、いくらダメージから逃れるためだからとはいえ、彼女は非常にも上空へと飛び上がった。
「なにっ!?」
「こ、小癪な……!」
彼女は上空から射撃を続けて、地上にいる俺を狙い撃ちした。正確な射撃能力を加えた乱射に、俺は逃げ惑うことしかできなかった。
「卑怯だぞ! 上空での戦闘は禁止されているんじゃないのか!?」
「お黙りなさい! 女性に反論するなんて、生意気な……!!」
「鎖火さん!?」
突然、劣勢に立たされた俺を、弥生は必死に見守った。
「織斑先生! こんな試合、早く中断させてください!?」
一方の一夏も、この試合はセシリアの一方的な反則負けになるべきと、千冬と真耶のいる観戦室へと押しかけてきた。
「いや……しばらく、鎖火の対応を見てみたい。試合は継続させる」
「あんた……それでも、教師かよ!?」
一夏は、そんな千冬の非情さに見兼ねた。
「くそぉ……!」
――このままだと、間違いなくやられる。今はこうして防御を続けながら、どうにか耐え凌いでいるものの、この防御力も長くは持ちそうにない。
「こんなとき……!」
――こんな時、零の力で空を飛べたなら……
「どうしたのかしら? 怖気づいて声も出ないんですの!?」
いつのまにやら、高笑いするセシリアはすでに勝ち誇っていた。くそ! ルール違反している奴が勝者を気取りやがって……
俺は、不可能でも必死で零へ語り返た。
「零、頼む……!」
――頼む、飛んでくれ……!
「俺に……力をくれ!」
なおも攻撃は続く。防御力はあと数分も持ちこたえそうにない。
――飛んでくれ……零!
「零……!」
――飛んでくれ! 飛ぶんだ!!
「空ヘ……」
――舞い上がれ!
刹那、セシリアの放った一発が俺のいる地上へ直撃し、辺りは砂煙にまみれて視界が見えずらくなる。
しかし、煙がさっても、そこに俺の姿は消えていた。何故なら……
「ッ!?」
ふとセシリアは自分よりも一方上の蒼空を見上げた。そこには、俺が浮上していたのだ。
「零……!?」
――零が……飛んだ?
そう、零が飛んだのだ。奇跡にせよ、これで対等に戦える条件は成立した。
「鎖火さん……」
絶望的戦況から生まれた奇跡に、弥生は涙をこぼした。
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