第六話「絶対神速」
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常日頃武器を手に握っているわけじゃないぞ? 取り出したいときに取りだせることができる。しかし……後悔のないよう選択してほしい。俺は、成り行きでこうなってしまったが……あと、RSを手にした以上、俺たちの仲間になって、共にテロ扱いされる恐れがある。もちろん、嘗ての友人にあえることも叶わない。それでも、本当にいいか?」
俺は、一夏に自分の境遇を簡単に話した。しかし、一夏の考えは変わらなかった。
「……構いません。俺、この世界が嫌いですから」
そういうと、一夏は制服の上着を脱ぐと、上半身の裸体を俺たちに見せた。彼の体には胸から背にかけて夥しい数の傷が刻まれていた。
「情けないことですが、女子数人に暴行されたんですよ?」
「え……!?」
弥生は、一夏の残酷な過去に穏やかな表情を変えた。
「女尊男卑の時代が訪れてからというもの、『織斑千冬の弟』、それだけの理由で俺を一個人として認めてもらえない日々が続きました。何か失敗したりカッコ悪いところを見られたりすれば、姉の熱狂的なファンの女子たちに激しい暴行や虐待を受けたりしました……」
――確か、一夏の姉は世界で有名なIS操縦者だ。後から聞いた話によれば、彼女はISの世界大会で優勝している。その大会の何回目かで、一夏は相手選手の手先に誘拐されて千冬は優勝を逃して一夏を救ったという。しかし、それが原因で一夏に対する女性らの反応は激変して、千冬とは対照的に虐待がさらにエスカレートしたらしい。
「こんな世界、バカげてます。だから、俺に「力」があれば、この世界を誰もが悲しまない平和な世界にしてみたいと何度思ったことか……」
「……」
俺は、無言のまま彼にRSの球体を握らせた。そして、強いまなざしで一夏を見つめる。
「狼さん……?」
「……お前には、これを受け取る資格がある。いや、義務だ……」
「……!」
一夏は、俺の手を強く握り返した。そして彼は、RS「白夜」を受け取ったのだ。
*
それからというもの、一夏は毎日空いた時間にRSの鍛錬を続けることになった。俺も負けてはいられまいと、来週に控えたセシリアとの決闘に備えて弥生と共にRSの練習を続けていた。
「……ッ!」
日曜日、ホログラムの映像を的に空いた時間にアリーナで稽古を続けているのだが……
「くそ! どうして空を飛べないんだ!?」
どんなに念じても、零は言うことを聞いてくれない。何か俺に足りない箇所があるというのか?
「どうすれば……!」
タオルを頭にかぶってドリンクのストローを加える俺の隣に弥生が座っていた。
「地上での戦闘技術は、ほぼマスターしたようですね? しかし……」
だが、一つ不安なことがあることは弥生も知っていた。
「どうやったら……飛行できるんだ?」
「とりあえず、零を信じてみましょう? 織斑先生には、『鎖火さんの
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