第六話「絶対神速」
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「狼さん……」
観戦室から見る一夏も、俺の異変に目を見開いた。
「ほう……あれが、アイツの力か?」
千冬は、険しい表情で狼の姿を宥める。
「そ、そんな……! あなたのISは地上戦用ではなくて!?」
非常識だと、セシリアは非難するが、俺はそんな彼女を非難した。
「反則まで犯して相手をいたぶるお前に言われる筋合いはないな!?」
「馬鹿にして……!」
「こい、セシリア! 勝負だ!!」
いざ、第二ラウンド開始だ! もう、これ以上は好きにさせやしない!!
「これでも……!」
セシリアは、ライフルを放ちつつ、背後に装備されたミサイルもつかって弾幕を作る。しかし、俺はそんな攻撃をものともせずに一直線に突っ込んでいた。
――早く! もっと早く!!
誰よりも早く、誰にも追いつけない速さを……
――風よりも……光よりも早く!
風を斬る音もなく、光をも見えない速さで……
「いっけえぇ!!」
刹那、俺の姿はフッと消える。代わりにセシリアはダメージを受け続けていた。しかし、誰が彼女にダメージを与えているのかは定かではない。ただ、金属の甲高い音と、火花だけが散って見えるだけ。そしてそれに苦しむセシリアとブルーティアーズの姿だけしか上空には見えない。
そして、
「これで……!」
次の瞬間、セシリアの間合いに俺が現れた。零双方を振り下ろしてトドメを決める!
「どうだぁー!」
この攻撃で、セシリアはアリーナの地面へ叩き付けられた。勿論、彼女のシールド残量はゼロとなって、勝利は確定した。
(試合終了 勝者、鎖火狼!)
勝利の報告がアリーナに響き渡った。
「やった! 狼さんが勝ったぞ!?」
一夏は、観戦室で歓喜になって飛び上がった。
「鎖火さん……!」
奇跡とはいえ、勝利を掴んだ狼の勇姿に、弥生は見惚れていた。
「天弓侍さん、勝ったよ?」
そして、目の前に降りったった狼へに、弥生は嬉しさと共に、涙を散らして彼の胸へ飛び込んできた。
「て、天弓侍さん!?」
途端顔を真っ赤にする俺はパニック状態になった。
「よかった……本当に、よかった……!」
――弥生……
そうか、こんなにも喜んでくれたのは、彼女が必死で俺を応援してくれていたんだな?
静かに、俺は彼女の鮮やかで黒い髪を撫でた。
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