第二百二十六話 徳川家の異変その六
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「そして考えることはな」
「喋るなと言っても」
「考えることはですな」
「どうしても止められませぬな」
「人というものは」
「ならば考える者の首を片っ端から切るか」
あえてだ、家康はこうしたことも言ってみせた。
「喋る者にもそうするか」
「そんなことをしてはきりがありませぬ」
「それは無体にも程があります」
「それだけは出来ませぬ」
「それは到底」
「そうじゃ、出来る筈がない」
家康もこのことはわかっている、それもよく。しかし家康はこの場ではそれでもあえて言ってみせたのである。
「絶対にな、だからな」
「この噂をどうするか」
「築山様、竹千代様のことも」
「どうされるかですか」
「一体」
「最悪のう」
家康は暗い決断も述べた。
「奥、竹千代の腹もな」
「いえ、殿それもです」
「あまりにも」
「築山様、竹千代様に落ち度はありませぬ」
「ましてや奥方様、ご子息にそうされるなぞ」
「幾ら何でも」
「わかっておる、しかしことを収めねばな」
どうしてもというのだ。
「ならぬのは事実じゃな」
「そのことは」
「紛れもなく」
「殿の仰る通りです」
「それは否定出来ませぬ」
「そうじゃな、とにかく竹千代は岡崎から駿府に移しわしと共に国全体の政を見させる」
このことはだ、家康は決めた。
「頭は一つにする、そして怪しい噂は一つ一つ消していく」
「そのことはですな」
「していきますな」
「一つずつでも」
「消していきますか」
「そうする、そしてな」
ここでだ、家康は。
酒井に顔を向けてだ、彼にはこう言った。
「小平次、御主は安土に行け」
「そのうえで信長公とお会いして」
「この度のことは吉法師殿もご存知の筈じゃ」
「既にですな」
「あの方ならな、それでじゃ」
「上様のお沙汰を仰ぎますか」
「そうせよ、わかったな」
「さすれば」
酒井は主の言葉に頷いた、そのうえで彼はすぐに駿府から岡崎に向かいだった。信康は彼と入れ替わる様にして岡崎から駿府に入った、その時にだ。
家康は自分に信康と共に挨拶に来た彼の正室五徳にも色々と問うた、しかし五徳もその噂についてはこう言った。
「そのどれもが」
「真ではないな」
「はい、ですから殿にお話して」
五徳は信康の方を見つつ家康に答えた。
「あえて殿のことを父上にお伝えしました」
「全てが事実無根とじゃな」
「左様です」
そのことをだ、信長に伝えたというのだ。
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