第二百二十六話 徳川家の異変その四
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「噂を流すぞ」
「はい、岡崎からですな」
「駿府、そして天下に向けて」
「噂を流し」
「そのうえで」
「徳川を弱める」
まさにその噂の力でというのだ。
「音もなくな」
「さすれば」
闇が動きだした、しかし音はなかった。だが不意に徳川家そして領土の中において奇怪な噂が流れはじめた。
「何っ、竹千代様がか」
「うむ、何でも近頃側室の方に入れあげられてな」
「その側室殿の言うがままか」
「しかも殿のご正室の築山様と竹千代様のご正室五徳様が不仲とか」
「いや、それだけではないぞ」
噂はまだあった。
「築山様が明から来た医師と密通されているとか」
「竹千代様が侍女の口を裂いたらしいぞ」
「織田家への謀反を考えておるとか」
「駿府の鉄砲は兵糧はその為か」
「これは恐ろしいことじゃ」
「まさか殿は」
徳川の領内でこの噂が急に広まった、それでだった。
家康もだ、その噂を駿府で聞いてだった、苦い顔で主な家臣達に問うた。
「領内のことは知っておろう」
「はい、近頃の噂ですな」
「築山様のことと竹千代様のこと」
「怪しいものばかりです」
「その全てが」
「奥は他の男と通じたりはせぬ」
まずは己の正室である築山のことからだ、家康は言った。
「そもそもその様な男はおらぬ」
「はい、明からの医師なぞ」
「その様な医師さえおりませぬ」
「それで何故築山様が通じられるのか」
「相手がおらぬのに」
家臣達もこのことから言う。
「しかも竹千代様のことも」
「人を弓矢の的にしただの侍女の口を裂いただの」
「確かに側室の方はおられますが」
「五徳様を大事にしておられます」
「ましてや謀反なぞ」
「このことも」
「わしが謀反とな」
家康はこのことについても首を傾げさせつつ言う。
「とてもな」
「はい、殿にその様なお心はありませぬ」
「そのことは我等が一番知っております」
家臣達もこのことを言う。
「天下を乱すことなぞ」
「とてもです」
「若しわしがよからぬことをする」
謀反、それを若ししてもというのだ。
「すぐに江戸城から兵が来るわ」
「東国の重鎮であるあの城から」
「まさにすぐにですな」
「あの城は東国全体への抑えですから」
徳川だけではない、甲斐の武田や相模の北条、越後の上杉、そして仙台の伊達も見ている。名護屋や岐阜、北ノ庄、金沢と置かれた城と同じく織田の護りの要それも東国のまさに抑えとなっている城であるのだ。
「我等は謀反なぞ出来ませぬし」
「それを起こせばすぐに征伐されることはわかっていること」
「それで何故謀反なぞ起こすのか」
「その様なことは有り得ませぬ」
「そうじゃ、まして当家は領地を治め色々な普請で忙しい」
人手も銭も足りないというの
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