巻ノ十五 堺の町その十二
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「父上、兄上とお話しようぞ」
「そうされますな」
「是非な」
こうしたことも話した一行だった、幸村はここで己のことも考える様になった。そしてそうした話をしてだった。
一行は堺を見て回り続けた、そして。
堺からどうしようかということになりだ、猿飛が言った。
「都に戻られますか」
「大坂を経てじゃな」
「はい、そうされますか」
「それが妥当か」
「若しくは奈良に行かれますか」
猿飛はこの道も示した。
「そちらの道はどうでしょうか」
「大坂か奈良か」
「奈良でしたらそこから伊勢、そして尾張に進み」
「そして岐阜か」
「三河に行ってもよいですし」
「三河か」
三河と聞いてだった、幸村は腕を組んで考えた。そのうえで猿飛に対してこう答えた。
「悪くないな、船で海から帰ろうかとも考えておったが」
「紀伊の海をですな」
「そうも考えておった、しかしな」
「奈良に行くのもですな」
「それも悪くない」
こう言うのだった。
「言われてみればな」
「ではどの道にされますか」
「そうじゃな。奈良に行きあちらの寺社を見るのもよいか」
「それでは奈良ですな」
「うむ、あの町に行こう」
「それから伊勢ですか」
望月はこの社を出した。
「そこに行かれますか」
「そうしようか」
「では」
「奈良に進もう」
幸村は道と次に行く場所も決めた。そしてだった。
一行は堺を後にして奈良に向かおうとした。しかしここでだった。
進もうとする一行の前にだ、一人の小柄な男が来た。見れば小坊主である。
小坊主は恭しくだ、幸村達に問うた。
「真田幸村殿と家臣の方々ですな」
「そうであるが」
幸村が小坊主に答えた。
「何故拙者の名を知っておる」
「お話を聞いていましたので」
「拙者達のか」
「はい、堺に来られた時から」
「拙者達は目立っておったか」
「旦那様から見れば」
「旦那様、というと」
小坊主の今の言葉にだった、幸村も家臣達も目を光らせた。そのうえで心の中で万が一に備えて身構えもした。
そのうえでだ、幸村は小坊主にあらためて問うた。
「誰じゃ」
「この町の方ですが」
「堺のか。となると豪商の方、いや」
すぐにだ、幸村はこの名を思い浮かべて言った。
「千利休殿か」
「左様です」
「千利休殿が我等を見ておったのか」
普段は冷静な霧隠が驚きの顔でやはり驚きの声をあげた。
「まさか」
「そうです、真田家のご次男の方が上方に来られたのを知られ」
「隠して進んではいなかったが気付かれておったとは」
幸村は迂闊といった顔で述べた。
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