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終わりではなかった
終わりではなかった
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とを自慢し近代思想の勝利を高らかに謳うつもりであった。頭の中に青写真が描かれていた。しかしだった。
 その彼の後ろからだった。不意にだ。声がしてきたのだった。
「赤いマントはいらへんか?」
「何っ!?」 
 まさかと思った。聞き間違いかとも思った。だが聞き間違いなぞではないことは彼がそう思った次の瞬間にわかったのだった。
 声がまたしてきた。声は再びこう言ってきたのだ。
「赤いマントはいらへんか?」
「またか」
 後ろから聞こえてくる。間違いなかった。二度も聞き間違える筈がない、彼は自分の耳に自信があったが幾ら何でも二度も聞き間違える筈がなかった。ましてやだ。
 今この四条に、少なくとも彼が目に見えている範囲では誰もいないのだ。それこそ野良犬も野良猫も一匹もいない。まるで全て夜の闇の中に飲み込まれてしまったかの様に誰もいない。闇夜の中に浮かぶ蜃気楼の様になっている四条に今いるのは彼だけなのだ。
 それで何故聞こえてくるか、風や何かが落ちる音でもなかった。ましてや人の声だ。どうして二度も聞き間違えることがあろうか。
 それでだ。Kはあの話を思い出したのだった。若しここで後ろを振り向けばそれで斬られる、背中からばっさりと斬られそのうえで鮮血の中でこと切れる。赤いマントを羽織った様になって死んでしまうのだ。
 そのことを思い出してだ。彼は振り向かなかった。また声がしたがそれでもだ。
 彼は振り向かない。そしてだった。
 前をひたすら歩く。そうして声を振り切ろうというのだ。声がするということはその主が必ずいる、そしてその主こそが何よりも危険な存在であるということは話を思い出したからではなく本能的に察していた。まさに振り向けば斬られる、背中から殺気、いやより異様な妖気を感じ取っていた。
 だからこそ彼は今はひたすら歩いて振り切ろうとした。だがそれでも声は最初と同じ間隔で聴こえてくる。彼の後ろについてきているのだ。
 何とか振り切ろう、この危機を逃れようとしてだ。彼はとにかく歩いた。無意識のうちに早足となっていた。そのうえで四条の京都らしく碁盤状になっている街の道をひたすら歩いた。
 そうして歩いているとやがて声は遠ざかっていったに思えた。彼はそのことを感じてようやく危機が去りつつあると思った。そのことに喜びを感じながらも油断しないようにしてだ。さらに歩いた。
 歩きに歩き道も一直線ではなくとにかく曲がりに曲がった。そのうち声が遂に聴こえなくなった。彼はこのことにようやく安堵を感じだした。だが。
 目の前に誰かがいた。それは。
 赤い、まさに鮮血の色のマントを羽織り血で染め上げられた服を着ている無気味な男だった。ざんぎり髪は乱れに乱れ痩せ細り目は血走っている。まるで幽鬼の様な姿だ。
 そ
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