原作開始前
EP.1 砂浜の少女
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処置だけなんだから、傷が悪化してないか調べないと。もし海水が入って化膿してたら大変だぞ。包帯も交換しないといけないし。一人で背中の様子を見られるなら話は別だけど」
ツンと撥ねつけるようなエルザに眉間に皺を寄せたワタルは淡々と言いながら、清潔な水とタオル、消毒液や軟膏の瓶に新しい包帯を取り出して詰め寄る。
「う……」
「ほら、分かったらさっさと後ろ向いてそれ脱げ」
「わ、分かったよ……。でも、背中だけだからな」
「俺もそのつもりだ。腕と脚はエルザが自分でやればいい」
まるで聞き分けのない子供に対する言い様に、渋々観念したエルザは背を向けて座るとボロボロの囚人服を脱いで包帯を捨てて、渡されたタオルを水で濡らして傷を洗うのだった。
「はい、終わり。化膿してるところも無いし、跡も残らないだろ」
「……どうも」
10分後、傷口に軟膏を塗って包帯を巻き終えたワタルの言葉に安堵しながらも、エルザは疲れたように返事を返した。
初めの方こそ顔から火が出ているかのような恥ずかしさで手元がおぼつかなかったし、背中にワタルの指が触れる度にピクリと肩を震わせていたエルザだったが、対照的に黙々と処置を進める彼の手つきは慣れた医者のそれだった。
これでは、一方的に羞恥心を持っている自分の方が馬鹿に見えるというものだ。
そう忸怩たる思いを胸中に覚えて憮然としていた時、肩に白い大きな布がかけられた。
「……それさ、もう着れないだろ。だから、あー……買ってきたんだ」
先程とは打って変わった様子のワタルの言葉にエルザがそれを広げてみると、それは白いワンピースだった。いつの間に置いたのか、横にはスニーカーもある。
確かに、今まで身に着けていた囚人服はボロボロで着れたものではない。砂浜を歩く分は構わなかったが、旅をするなら靴だって必要だ。
加えて肌を隠す物が包帯以外ない今、身も蓋も無い言い方だがエルザは全裸なのだ。それを意識した瞬間、激しい羞恥に襲われたエルザは慌てて礼を言うとワタルがこちらに背を向けているのを確認してから服と靴を身に着け、そして声を掛けた。
「あ、ありがとう。…………もういいぞ」
「了解。ん、似合ってるじゃん」
「そ、そうか?」
「ああ、本当だ」
「似合っている、か……。そうか、そうか……」
服を似合っている、と言われたのは初めてだったため、エルザは嬉しいやら恥ずかしいやらで顔を赤く染める。
照れたのか、落ち着かないといった風に緋色の髪を弄り始めたエルザの様子に少しだけ息を飲んだワタルは数回だけ目を瞬かせると口を開いた。
「……まあ、いいや。それで、だ。やっぱりフィオーレには歩くと結構かかるそうだ。それでも行くんだろ?」
「ああ。フィオーレのマ
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