原作開始前
EP.1 砂浜の少女
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続ける事も出来たのだ。
にもかかわらず、貴重な物資を消費してまで、なぜ彼女を助けたのか――自分のことながら、彼にはよく分からなかった。
「それは……」
「……もう一度聞こう、これからどうする?」
心の中の疑問に蓋をして、再び質問をするワタルに対し、エルザは今度は素直に答えた。
「……妖精の尻尾に行こうと思う」
「妖精の尻尾?」
「魔導士ギルドだ。そういえばお前……いや、あなたも魔導士と言ったな。妖精の尻尾を知っているか?」
「いや、聞いた事ないな。多分すぐ西にあるフィオーレ王国のギルドだとは思うが。フィオーレは永世中立国家。魔法も魔導士ギルドも盛んだしな」
旅の魔導士。
塔で昔妖精の尻尾にいたという、そして命の恩人でもある老魔導士の話では、魔導士はギルドに所属して一人前と認められるとの事だった。
ロブと名乗ったその老人の最期を思い出して心が沈みそうになったが、それを思い出してエルザは口を開いた。
「あなたもどこかのギルドの一員なのか?」
「……」
一瞬。
ほんの一瞬だけ、エルザはワタルの顔に悲しげな色が宿ったのを見た。瞬きすればその色は消えていたほどの刹那の事であり、ともすればワタル自身も気付いていないのかもしれない。
或いは見間違いかもしれない。
それでも、彼女にはそれが妙に気に掛かり、しかし聞くのも躊躇われたためそれ以上聞くことはできなかった。
沈黙が狭い洞窟内を満たし、焚火で炭化した木片が崩れる音が響く。
気まずい沈黙の原因であったワタルは頭を掻き、口火を切った。
「……一緒に行くか?」
「え?」
急な提案に、エルザは聞き返した。
土地勘と旅費はもちろん、2年前に住んでいた村から出た事さえ数えるほどしかなかったエルザにとって、その提案は渡りに船であった。
しかし、だからといって二つ返事で頷くという訳では無かった。
正義感が強く、義理堅い彼女にとって恩人を疑う事は心苦しかったが、奴隷生活長かったことと、その反乱の首謀者でもあった彼女は、この旨すぎる話に思わず警戒心を抱いてしまうのである。
「俺も西の方に行こうと思ってたんだ。行く方向が同じなら人数は一人より二人の方がいい」
「……」
「ここからフィオーレまで歩いて1ヶ月は掛かる。俺は2年くらい一人旅をしているけど、流石に女の子一人は結構危険だと思うし……それとも俺は信用できないか?」
「そんなことは……」
答えにくい質問に再び言葉に詰まったエルザに対し、ワタルは話を進める。
「じゃあ、決まりだな。歩けるか?」
「あ、ああ……そういえば、治療の礼を言ってなかったな。ありがとう」
「気にするなよ、そんなこと。ま
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