3部分:第三章
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第三章
「しかも薬に対しても異常に強い体質を持っておりました」
「恐ろしいですね」
「そのうえその小さな身体からは想像もできない程の食欲を持っていました。貴方は彼等により体内の血と養分を吸い取られていたのです」
「そうだったのですか。危ないところでしたね」
「はい、あと手術が三日遅ければ貴方はお亡くなりになっていました」
「そうですか・・・・・・」
彼はそれを聞いてあらためて戦慄を覚えた。
「ただ一つ気になることがあります」
医者はこおで表情を変えた。
「あの虫は一体何処で入ったかということです」
その顔は仁術を施す者から研究者のものになった。医者は大なり小なりこの二つの顔を持つ。
「あのような虫は今まで見たことも聞いたこともありません。当然我が国にはおりません」
彼は医者が次に何を言うか大体予想していた。
「最近海外旅行に行かれたり出張で海外に行ったことはありませんか?」
「いえ、全く」
彼は答えた。
「そういう仕事じゃありませんから。それに私は出不精で国内旅行にも行ったことがありません」
「そうですか」
彼はここで聞く内容を変えた。
「それでは海外から輸入された食べ物を口にしたことはありますか?」
「食べ物ですか?」
一概には言えない。スーパーに行けば外国から入ってきた食べ物が溢れている。オレンジにしろ魚にしろ何でもそうだ。
「そうですねえ、入院する前に食べたものといえば・・・・・・」
彼は記憶をたどっていった。そしてあるものを思い出した。
「あ!」
彼は思わず声をあげた。
「思い出しました、あれですよ」
「あれとは!?」
医者は身を乗り出して尋ねてきた。
「実は安売りだった缶詰を買ったのですがね」
「はい、缶詰ですね」
医者は真剣な表情でその話を聞いている。
「見た事も無い文字で書かれた輸入品だったんですがね」
「中身は一体何でしたか!?」
「果物でした。外見は桃みたいでしたが歯ざわりは洋梨に似ていて味はライチそっくりでした」
「また変わった果物ですね」
医者はそれを聞いて顔を顰めた。
「はい。はじめて食べるものでした」
彼は答えた。
「味は良かったのですが途中で何か奇妙なものを飲み込んだという感触がありました」
「それですかね」
「私にはわかりませんが・・・・・・。それからです。胃の中に虫が住むようになったのは」
「それではその缶詰の中に入っていたと考えるのが妥当ですね」
「はい。しかし不思議なことがあるのですよ」
彼はここで顔を顰めさせた。
「何がですか!?」
医者はその表情を見て問うた。
「いえ、缶詰ですよ」
彼は医者に顔を向けた。
「中には何もいない筈でしょう?真空状態で密閉されているんですから」
「はい」
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