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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 9.
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快感えるのは難しい。それがパイロットという人種だ。
『いいですか? それでは上昇します』
 ルカの声がした後、機体がふわりと地上から離れた。それまで立っていた地面は縮尺の変化する航空写真と化し、空気の流れに髪が運ばれる。平服には堪える2月の冷気だが、ルカ機がしっかりと庇ってくれるので、気流をまともに受ける心配まではない。
「景色は悪くないが、やっぱり落ち着かないな」
 人の機体に運ばれる事で、愛機のコクピットが無性に恋しくなる。どうやらそれは、刹那達だけの感情ではないようだ。借金返済の為に乗っているブラスタなのに、クロウもまたブラスタのコクピットをリアルに思い起こす自分を自覚する。
 尤も、クロウの機体はトレミーに収容されていて、この飛行が終わってもすぐには愛機に飛び込めないのだが。
 ベクター・マシンに見守られつつ、SMSの機体が次々とマクロス・クォーターに着艦してゆく。ルカ機も着艦と同時に艦内に吸い込まれ、クロウは何日かぶりにマクロス・クォーターの金属板に足をついた。
 その後、トレミーに移動を希望するパイロットがメサイアの後席に座り、愛機の待つソレスタルビーイングの母艦へと移る。その状態で、収容された全員がジェフリーとスメラギの指示を待った。
 ベクター・マシンも一旦着艦し、2隻のブリーフィング・ルームにパイロット達が集まる。私服のままでいる者、ノーマル・スーツで身を固めている者とそれぞれだが、全員が一様に反応するところがあった。
 モニターに、件の映像が表示された時だ。映し出されているのはマクロス・クォーターが収集したあのショッピング・モールの映像とデータで、立体処理された最奥の建物を貫通している直線は、数本が一カ所だけ僅かに曲げられていた。歪みのある場所は吹き抜けの4階部分と、位置的に合致している。
 先程まであの建物にいたクロウ達が、揃って総毛立つ。そんな映像でもある。
『この次元の歪みは、既に1時間以上も安定した状態にある』ジェフリー艦長の声が、クロウ達の収容中にも解析を続けていた事を告げ、『これは極めて希なケースだ』と付け加えた。『歪みは元々不安定で、解消する方向へと流れやすい。今はこうして安定している状態にあるが、これが1分、1時間後に突然ライノダモンを吐き出して消滅する可能性は高い。我々はこのまま上空に留まり、この歪みの監視を続ける。諸君は、ライノダモンの全身が出現したと同時に出撃。これを撃破してもらいたい』
 パイロット達は皆、やや困った様子でモニターを睨みつけている。
「その監視ってのは、いつまで続けるんだ?」
 アポロが、気の抜けた声で質問した。
 小さく頷く者が数人加わる。それ程、彼の問いは全員が訊きたいところではあった。
『現時点では、24時間。これを期限とします』そしてスメラギの回答は、上が期限
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