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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 9.
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ロジャーが「我々はZEXIS。客と店員の避難誘導を終え、今出てきたところだ」と伝える。
 兵士は敬礼をし、「現場からの一般人の退去は、我々が引き継ぎました」と答え、無線で上官にロジャーの話を伝えた。
 集団から5〜6歩離れ、ロックオンが携帯端末にロジャーと同様の報告を始める。言うまでもなく彼の交信相手はトレミーにいるスメラギで、内容も報告だけでは終わらない。
 幸い屋外は流れる音楽がない分、盗み聞きはやりやすかった。携帯端末がロックオンの手にあろうとも、スメラギの声をかなり明瞭に聞き取る事ができる。
『よくやったわね。これからみんなをマクロス・クォーターが収容するわ。あなた達も一旦、クォーターに合流してちょうだい』
「了解。で、その合流の為に、俺達は誰の迎えを待てばいいんだ?」
 ロックオンが、肝心な点についてスメラギに問いかける。
『スカル小隊よ。みんなの収容中に万全を期す為、ベクター・マシン3機を対空監視につけるわ』
 さらりと言い切るスメラギの声が、淡々としているからこそ不自然に聞こえるのは何故だろう。
「スカル小隊?」直感的に不安を覚えたのか、ロックオンが戸惑いぎみに繰り返す。「小型機ばっかっていう事は…」
 おそらく、スメラギのプランと皆が想像しているものは同じだ。その上で、スメラギは何も否定しなかった。
『クォーターには高度を下げてもらうから。大丈夫。彼等の腕を信用して』
「おいっ! ちょっと待ってくれ! そういうレベルの心配より…!!」
 しかし、無情にも通信は切れた。
 凍り付いた表情のロックオンが周囲を見回すと、皆しんとしている。その上、ロジャーと会話していた兵士は逃げるように去って行く始末だ。
 上空では、皆に対するロックオンの説明を待たずに、ベクター・マシンの射出が始まった。
「あれ、アポロ達じゃないのか?」アスランが上空を仰いだ直後、マクロス・クォーターから放たれた3機のメサイアが変形し、次第にその機影を大きいものへと変えてゆく。明色のクァドラン・レア2機も、発進後に降下を開始した。
「まさか…」ルナマリアがぽっかりと口を開ければ、「私達のお迎えって…」と流石のミヅキも顔色をなくす。
 何故、スメラギがクロウ達の収容にスカル小隊を宛がったのかは、メサイアがガウォーク形態に変形した時、全員が合点した。飛行能力を維持したまま手首を使用する事ができるこの形態が、便利に映らない筈はない。
 しかも、メサイアは全機が後席を持つ。移動効率という点から見て申し分ない、という判断なのだろう。確かにマクロス・クォーターも降下しつつあり、ベクター・マシンによる対空監視など危険度を下げるべき配慮を伺う事はできる。
 とはいえ、些か大胆すぎる方法ではないのか。仮に、ZEXIS内部の信頼度を三大国家に示す狙いがあるのだと
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