月下に咲く薔薇 9.
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ーは殊更「ZEXISの一員として」を強調し、情に流されている中原にメンバーとしての自覚を促した。
そう。ZEXISに所属しているからこそ、黒の騎士団を癒したいと思い、また現状での冷静な行動を求められもする。たとえ後方支援要員であろうとも、彼女達が背負っている現実はクロウ達と何ら変わらない。前者の願望みにしがみつく事は許されなかった。
「…はい、わかりました」
萎れた中原が承諾し、「また何か考えようよ」と肩を撫でる谷川に慰められる。
「よし。我々も、このまま建物の外に出るぞ!」
ロジャーの手が右から左へと動き、ZEXISの全員を外へと促す。敢えて残った施設関係者も流石に諦め、足音は人数分の小走りに変わった。
「あ、車がみんな駐車場なんだけど!」突然エイジが目を見開くと、「後で大塚長官に謝りましょう」とルナマリアがエイジの背を押し忘れさせる。
長椅子や倒れた鉢植えを巧みに避けながら、クロウは1人、吹き抜けのある方向を一度だけ振り返った。
ライノダモンの足は未だ何処にも出現しておらず、全身が露わになる兆候は見られない。扇が異変に気づいた時より口の形ははっきりしているというが、騒ぎが起きてから既に30分以上が経過している。
インペリウム帝国の真意を、クロウは測りかねていた。軽い嫌がらせとしては成立するのだろうが、次元獣は、世界を焼土と化しながら要塞を移動させているインペリウムの破壊の使徒だ。死者・負傷者ゼロでクロウを安堵させ、あの鬼畜に何のメリットがある?
続きがあるのではないか。客や店員を屋外に避難させた後に起きる何かが。
外に出てみれば、周辺一帯は随分閑散としていた。平日の昼間とは思えないあの数の客達が既に遠方に集まり、整然とバスに乗り込んでいる。大型車両も手回しが良く、バスの他に軍のトラックまで縦列を組んでいる。
「凄い人なんだね、大塚長官って」
爽やかに感心する斗牙に、10人以上のパイロットが無言で首肯した。
その直後に、全員の顔が綻ぶ。組織の長が見せた働きぶりに頼もしさを覚え、戦士としての重荷が少し減ったと気がついたのだ。歯車は噛み合い、全ては健全に機能している。
上空では、マクロス・クォーターが筋状の雲に黒く艦影で縦長なHの文字を描き上げていた。
「あれ? トレミーは?」愛機を格納している母艦を探すシンに、「もっと高い所にいるのさ」とデュオが空を指しながらスメラギの意図を説明する。
「そんな…。ソレスタルビーイングだって、この世界を守っているのに」
口端を落とすシンに、琉菜がそっと近づいた。
「だから、私達だけでも覚えておくのよ。あの人達も正しい事をしているんだ、って」
「あ、ああ」
ZEXISの全員が建物からの距離を確保すると、武装した兵士が1人近づいて来た。
色々と訊かれる前に、
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