月下に咲く薔薇 9.
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の建物だけって事らしい。俺の経験則から言えせてもらえば、インペリウムは次元獣を同じ場所に複数同時に投入して使う。もし、ライノダモンがこの建物の中に転移しかけているとして、他の次元獣は今何処にいるんだ?」
デュオ、クラン、扇、そしてクロウまでもが、通話中のロックオンについっと目をやった。全員が同時に同じ一件を思い出した為だ。
突然1輪のバラが消えた、とこぼしていたロックオンのあの話を。
「出したり消したり。今朝からそんな事が多いよな。ちょっと気にならないか?」
ミシェルの指摘を聞きながら、クロウは次第に怒りが込み上げてくる自分の内面を自覚した。悪質な悪戯なのか、或いは本物の次元獣なのか。そういった真偽の狭間で人を迷わせて喜ぶ鬼畜の存在を突然思い出したからだ。
しかも、その男には元々次元獣との繋がりがある。居心地の悪い状況の中で、その名を想起している仲間もいるのではないか。
ロックオンが通信を切って間もなく、建物の右手からまとまった数の足音が近づいて来た。ロジャーに刹那達、護衛対象だったミヅキ達に赤木や斗牙も合流している。
男達の歩調に変化はないが、琉菜や中原など主に女性達が途中で小走りをやめ、吹き抜けが近くなる程に顔をひどく歪めた。見慣れた敵といっても、相手は今尚その体の一部しかない。仰ぐ目つきの微妙加減に、彼女達の抱いた感想が現れていた。
「やだ。本当に口だけ…」
代表としてぽつりと漏らす琉菜は、とある黒い虫と同レベルの嫌悪感を滲ませている。
「みんな聞いてくれ!」ロックオンの左手が、端末を握ったまま頭上に挙げた。
人の数が随分と減って、館内で発する声は格段に通りやすくなっている。今、耳に入ってくる音といえば、館内に流れる音楽とZEXISが発する靴音や声だけだ。
「今、トレミーとマクロス・クォーターがこの建物の上空にいる。2隻の格納庫には、俺達全員の機体が収容してあるそうだ!」
「やったー!!」全員が、その場で踊り上がった。
「但し。この建物の一部に、ほんの僅かな次元の歪みがあると言ってる。急に大きくなるとまずい。俺達も、建物の外に避難するぞ」
「えー…」
歓喜の中に、ふと小さな不満の声が混じった。声の主にと次第に集まってゆく視線は、全てが中原のところで止まる。
「あの…。保冷ロッカーに、買った物を入れたままなんですけど…」
中原の足が数歩動いた。荷物との合流を望んで、そうせずにはいられなかったのだろう。
しかし、行かせる訳にはいかない。
「諦めるんだ」いつになく厳格な態度で、ロジャーが中原の手首を掴んで止めた。「君の気持ちはわかる。確かに我々は、その為に来たのだから。しかし、あのライノダモンの口が本物であるとわかった以上、我々はZEXISの一員として冷静な行動をとらなければならない」
ロジャ
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