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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 9.
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している。その後、屋外で落ち合うつもりだったんだが…。判断がしにくいな」
 ロックオンが発信を躊躇い、自らの手の中で携帯端末を弄ぶ。
「ずっと、口だけのままあの状態なのか?」首を捻るデュオに、「そもそも、本物なのか?」と扇が疑問を上積みする。
 全ては、最も長い時間あの口の側にいるクロウへの質問だった。
「それで、次元獣バスターの意見は?」ミシェルが、クロウの肩書きを強調する。「真面目な話、専門家の意見が聞きたいんだ」
「専門家か。今、そいつを言われると耳が痛ぇ」お手上げである事を仄めかし、クロウは小さく息を吐いた。「俺の見立てでは、悪戯の可能性が1、本物の可能性が99。尤も、その悪戯ってのは相当高度な手段を無駄に駆使しないと無理なレベルだ」
「その根拠は?」
 扇の質問に対し、クロウは左手で指を2本立て、先に数を示す。
「理由は2つ。まず1つ目は、映像なら、普通投影先の凸凹や模様は透けて見える。ところが、あの歯列の向こうにある布は、模様どころか布そのものが口の所為でまるっきり見えなくなってるだろ。口が不透明だからだ。だが、実体なのかと言えば、そうとも言い切れない。装飾用の吊り下げ照明でも、隣の布に影が作られてない。そいつが2つ目だ」
「おかしいぞ、クロウ」と、納得しきれないクランが唇を尖らせた。「今の説明は、本物である事も否定していないか? それで、どうして本物の可能性が99パーセントになるのだ?」
「実体ってのは、人形を使った悪戯の話だ。もし、そんな事をやろうものなら、側に吊り下げられている照明が影を作るだろう? そういう可能性も視野に入れてみた」
「消去法で、悪戯の可能性を排除か」ミシェルが頭上を丹念に吟味し、「確かに、投影機の類を使ってあの場所に像を結ぶのは並の工夫じゃ無理だ。必ず、布のどれかが邪魔をする」
「本物の次元獣だとしたら、いつまでも口だけってのがどうにも腑に落ちねぇって事になる」半眼のデュオが、肩を竦めた。「なるほど。こいつぁやりにくいぜ」
 もし、悪質な悪戯と断定してやれば、施設関係者は安堵するだろう。脅威の度合が格段に下がる事で、営業再開の目途がつくのだから。
 しかし、今はあの口を本物の次元獣の一部として対処するしかない。
 ミシェルの携帯端末が鳴る。
「はい、こちらミシェル」
 その場にいる者が、一斉に会話に耳を欹てた。
 が、ロックオンの端末も音を立て、2人は別々の会話を始める。
 先に通信を終えたのは、ミシェルだった。
「ロジャーからだ。他の2棟の避難誘導が終わって、全員が今こちらに向かっている」
 扇が「この状況は、説明するより見てもらう方が早いだろう」と安堵すれば、「ああ」とミシェルが頷いた。しかし、その表情は余りにも厳しい。
「ショッピング・モールの中で異変が起きているのは、こ
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