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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 8.
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れない」
「一瞬でバラが消えるなら、一瞬で現れる可能性もある」
 眉根を寄せるロックオンに、ミシェルが小さく頷いて見せた。
「そういう事。突然現れたり消えたりするのは、バラそのものなのか、バラを置いている人物の方なのか。これもはっきりとはしない。ただ、ロジャーの話では、ティファちゃんが何かの視線を感じて怯えた時間は今朝。これは、はっきりしている。件の第4会議室には、今朝クランがバラを持ち込んだ。これも、俺達全員が見ている。…繋がっている部分もあるんだ。流石に少し勘ぐりたくはなるな」
 ミシェルが再び2つの円を描くと、その1つを1本の線で円卓の中央へと導いた。
 その先は、『第4会議室』か。『今朝』というタイミングと共に複数回出てくれば、全員が自ずとティファが感知したものと関係づけたくなる。
 一瞬の間が開いた。
「ちょっといいか」突然扇が、ミシェルの話に割り込む。「この話を、ロジャー抜きで終わらせていいのか? 今までの話を聞く限りじゃ、参考程度にするにしても一番関心があるのは彼等だと思うぞ」
 コーヒーを一口だけ含んで、クロウは溜息から始める。
「なるべく早く伝えた方がいいのは確かだな。情報の価値を決めるのは、俺達じゃねぇ。ZEUTHに知らせてさえいれば、後は彼等が自分達でその…」
 言いかけたまま、クロウは硬直する。コーヒー・ショップの中で、幾つもの椅子が床を擦る音が重なり響いた。
 複数の人間が、一斉に立ち上がっているのだ。察するところ、全員が同じ切っ掛けで。
「…何だか嫌な反応だな」
 同時すぎる客達の行動から不穏なものを捉え、扇が立ち上がり様子を見に行く。
 どよめきも聞こえ始めた。壁を通す遮蔽感で、店の外から何らかの異常を察知している人々が相当数いるのだとわかる。
「何かを遠巻きにしている感じだな」
 耳から入る情報に、ロックオンも神経を研ぎ澄ませていた。洞察に集中するその表情は、コーヒー・ショップに居ながらソレスタルビーイングのスナイパーのものに変わっている。
 直後に、とうとう悲鳴が上がった。
 異変に気を取られ呆然としていた客達が、緩慢な動きをやめ一気に慌ただしく衝動的な行動に走る。乱れ交錯する靴音、誰かが障害物を蹴散らし、人や物が倒れ、子供は泣き叫んだままその声を小さくしてゆく。
 クロウ達も急ぎ席を立つと、扇が戻って来た。
「吹き抜けの4階辺りに何かがいるぞ!!」と喚くその顔は強ばり、黒の騎士団にスイッチを入れる事態であるとクロウ達に伝える。「施設側の誘導がまだない。おそらく、何が起きているのかを知らないんだ。俺はそっちにかかるから、客の誘導を頼む」
「了解!」とミシェルが短く答えた。
 全員が通路に飛び出せば、そこには散乱した荷物と倒れた鉢植えの中味が撒き散らされ、客達が不便そうにしながらも他
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