月下に咲く薔薇 8.
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方が良そさうだな」とロックオンも短く唸る。「一つ間違えると、スーパーに着いた時、1人2人いなくなっててもおかしくはないぞ。これは」
「そうですね」
目移りから迷子になる危険性を察し、大山もふと顔をしかめる。
結局、しっかり者で固めた集団を形成しそのままスーパーへと流し込む形を採った。
それでも、私服に着替えた少年・少女パイロット達は途中、その優れた観察眼で歩きながら目にとめた品に表情を輝やかせる。右に左にと顔と目は慌ただしく動き、時には指が事後の標的を指し示す。
「あ! 私、後であの靴が見たい!」
「私、ここでシェリルのベスト・アルバム買っちゃおうかな」
「靴か…。俺も見たいな」
まるで、学校や会社に通う極普通の一般客だ。その中に、21世紀警備保障の男女までが加わってしまえば、モールで浮いている者は、残った極数人になる。
幸い、1人の迷子も出さずに済み、他の買い物客はクロウ達のような胡散臭い男達に別段不審そうな素振りを見せなかった。むしろ、「ほら、ケーキは後々!」と咎めるロックオンに同情を上乗せした笑顔を垣間見せる者すらいる。
「俺、こういうのを何て言うか聞いた事があるぜ」
にっと白い歯を光らせるクロウが、背後からロックオンに声をかける。
「旗振り添乗員、だろ?」
「ああ。知ってたのか。似合ってるぜ」
「ぬかせ」と、ロックオンが僅かに赤面しつつ顔を背ける。
スーパーに入ってから、女性達の買い物意欲は更に熱を帯びた。微妙に違うだけの商品を比較する事に時間をかけ、材料や器具を調達してゆく。数も必要なので、買い物カートは次第に数が増えてゆき、女性達ばかりかエイジやミシェル、シン達までもが音の立つカートを押して回る羽目になった。
尤もそれが楽しそうなのだから、当初の目的通り、ショッピング・モールでの息抜きは大成功と言えるのかもしれない。
「これで、狙いの半分は達成できたんじゃないのかな」
周辺の警戒を続けているアレルヤの表情にも、満ち足りたものが溢れている。彼の喜びは、店舗から貰ったものではなく、気分転換をしている仲間達から分けてもらったものだ。
一方で、刹那とティエリアは相変わらずそれとなく周囲に視線を走らせているが、警護対象はほとんどがソレスタルビーイングと同等のスペシャリストときている。クロウは思った。2人は、むしろ一瞬でもアレルヤを見習うべきだ、と。
壮絶な買い物が終わり、大量の商品を一旦有料のロッカー式冷蔵庫に押し込む。これだけで相当楽しんだ者も少なくないが、喜々とした少年少女達の娯楽はむしろここからが本番になる。
全員、今か今かと大山の言葉を待っていた。
「1時間後、ここにもう一度集合しましょう」
大山から自由行動の許可が下りるや、まず斗牙が「わーい!」と叫んでエイジと赤木の手を引き
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