月下に咲く薔薇 8.
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が。扇、大山、ドロシーの車は、ロジャーが運転する事になっていた。チームの分割、男性の配分といい、絶妙なところは流石戦術予報士といったところだ。
6台の車は、全員が乗り込む側から勝手に駐車場を出て行く。それでも結果として路上で全車が縦列を成すのは、ショッピング・モールに続く道がひどく限られている為と、道自体がとても空いている為だ。
バトルキャンプ周辺の道路は、皆幅広に整備されている。基地を出入りする大型車両に対応した措置だが、県道に合流して尚対向車がほとんどいない寂しさから、クロウは静岡県の海沿いというバトルキャンプの立地を実感せずにはいられない。
その上、これから向かうショッピング・モールも郊外型の大型店舗ときている。始終、渋滞とは無縁の移動になると聞いてはいたがと、そっと前方上空に気を配った。
冬らしい淡い水色の空に、筋状の雲がかかっている。周囲に高い建物や山がないので、都心や熱海に比べても更に空が広いと感じる。
あの雲の上から、この車両を監視している目は光っているのだろうか。ZEXISを「味方ではない存在」と識別している、冷たい人工物の目は。
やがて15分も車を走らせると、左前方に白い建物が1つ見え始めた。少なくともこの直線中に信号機が5つはあるというのに、どういう大きさなのかと呆れたくなる。
3つ先の交差点沿いに立つコンビニの看板が、遙か前方の足下でけなげに回転していた。建物の大きさは推して知るべしというところだ。
「あれか。確かに、かなりでかそうだな」
クロウが言葉で前方を指すと、「あれは立体駐車場で、その奥に店舗の入った建物があるんです」とキラが説明してくれる。
「行った事があるのか? キラは」
「はい。前に一度、女の子達の警護を兼ねて」
「結構面白かったわよね」
ルナマリアが当時の記憶を反芻すると、「あの時は随分と慌ただして残念だったね」と首を縦に動かしながらキラが答える。
「だったら今日は、その時の分まで遊べるだろ。何といっても、正式な息抜き行事だ」バックミラーで、クロウは後席に座るキラとシン、ルナマリアを見比べる。「買い物以外にも時間が使えるようにしてくれているらしい」
「なに? その正式な息抜きって」ころころと笑いながら、「でも、嬉しいわ。ティエリアなら買い物の後どうする? 一緒に楽しみましょう」とルナマリアがガンダムマイスターを敢えて雑談に巻き込もうとした。
助手席で周囲を警戒しているティエリアが、ルナマリアの優しい言葉に一瞬上体を揺らす。はっきりとした声にはならなかったが、運転席にいるクロウは、彼の唇が微かに動いているところを見届けた。
聞かずとも、言わんとする事は察しがつく。とても短いその言葉の意味は。
混雑など無縁な道を車列は進む。しかし、快適を満喫するのはここまでだった。
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