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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 8.
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手を振りながら、やや懐かしそうに話す。「俺達のいるコロニーってのも、同型を幾つも宇宙に浮かべてるんだが、中身の方は様々さ。工業用だったり、観光用だったりってな。人工的な常夏に大きく育った椰子の木。それでも、ココナツ・ジュースは美味いし、水着の美女もいる」
「いいじゃないか。きっと、それが人間なんだ。何でも描けるキャンバスに、わざわざ見知った地球を再現せずにはいられない。どんな時代、どんな次元にいても」
 ロックオンの総括に、「おおっ、深いねぇ」と感心顔のデュオが体を捻り後ろを顧みる。
「なら、この寒さも地球の恵みとして、俺達はもう少し有り難がるべきなのか」
 余り嬉しいものではないからこそ、クロウは逆に仲間達へと振ってみた。
「でも私は、もう少し暖かい方がいいぞ」
「気が合うな。俺もだ」とクロウは笑って、皆と合流する。
 ZEXISの外出用に用意された車は、計6台。全てセダンで、運転者には、ロックオン、アレルヤ、ミヅキ、アスラン、ロジャー、そしてクロウが選ばれた。有事の際、多少強引な運転をも辞さない顔ぶればかりが選抜されている。勿論、刹那やミシェル、デュオや斗牙達が外されたのは、年齢的な問題を抱えているからだ。
「えー? 俺もこっち組ィ!?」と、刹那を見下ろしながら赤木は目を見開くが、「妥当な判断だ」とその刹那に一蹴され、落胆の果てに真下を向く程首を前に折る。
「いいのよ、これで。赤木君には無理でしょ。映画ばりのカーチェイスなんて」
 いぶきが正論を持ち出せば、「俺は手伝わなくていいのか?」と扇が1歩前に出る。
「扇。君は、私の運転する車に乗ってもらう。車中で話したい事もあるのだが、いいかな?」
 後席のドアを開け、ロジャーが逆に扇に質問した。ロジャーの運転する車にはドロシーの他、バレンタイン企画の責任者である大山が乗り込む事になっている。
 その顔ぶれでの車中会談。「わかった」と承諾する扇の表情が引き締まった。扇がロジャーの車に乗る直前、キーを握ったロックオンと軽く挨拶を交わす。
 ようやく全員が揃った事を確認し、「そろそろ出発しましょうか」と大山が皆にも乗車するよう促した。
 駐車場に集まった人影が、次々と車の中へと消えてゆく。
「久し振りのベリーね。ちょっとワクワクしてるかも」
 ミヅキの後ろに収まった琉菜が、喜々として目的地の名を呟く。
 ベリーとは、大山達が目的地に選んだショッピング・モールの名前だ。スーパーからDIY用品店、乳幼児用品店、服飾の店や書店、レストラン、コーヒー・ショップ、フード・コート、更には映画館やゲーム・センターまで入っている大型商業施設として名を馳せている。
 店舗数は周辺地域でも類を見ない破格の数を誇り、テナントを収容している建物は全部で3棟。丸一日を費やしてもまだ足らないという遊び甲斐
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