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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三八話 心の隙
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な唯依を構わず人の寄り付かない物陰に鈴木達が引きずり込もうと、唯依の足を抱えようとする―――が、それは叶わなかった。
“パァアァン!!”
寒空に乾いた銃声が響いた。
「な…………ぐぉおあああああああああああああ!!!」
悲鳴は唯依を羽交い絞めにしていた後ろの男だった。
悲鳴と共に唯依の体が地面に落とされる。
(ぐっ……一体何が。)
満足に受け身も取れないままアスファルトに体を打ち付ける唯依は何が起こったのか把握できない。
「てめぇだれっ!?」
「カッ!!」
誰だ、という言葉も中ほどに裂帛の呼気と共に割り込んだ純白を纏う男が鈴木の腹に正拳を叩き込む。
「―――がっ」
横隔膜を衝撃が強打し、強制的に肺の空気が吐き出されて行動不能となる。
腹を抱えながら膝から崩れ落ちそうな彼に、純白を纏った男は即座にちょうどいい高さに落ちたその頭部へハンマーの一撃を連想させる程の強烈な回し蹴りをさく裂させた。
「悪いね、ちょうどいい高さだったから蹴り飛ばさせてもらった。」
吹っ飛ばされ、滑走路横の芝生の坂に倒れる鈴木に向かい底冷えのする声色で聞き覚えのある声が響く。
その鋭い回し蹴りは一撃のもと鈴木の意識を刈り取っていた為に彼に届くことはない。
「まさか、護衛がいたなんてよ………しくったぜ」
「貴様ら、それでも大和男児か。我欲を貪りし惰弱者どもが……貴様らに斯の地に生きる資格はない。」
「はっ!今時そういうのは流行らないぜ。」
足を撃たれて地面に転げた男に白き軍服を纏う男が近づいていく―――唯依が聞いた事もないほどに冷え切った声だが、間違いなくその人物は唯依の知る甲斐咲良だった。
「流行り廃りで一々自分を変えるのは”自分が無い”ということ他ならないのが分からないのか―――哀れだな。」
「甲斐…中尉。」
「篁中尉、相手がまだ死んでいない以上は油断するな。」
地に倒れた唯依の真横を通り過ぎながら呆然とした様子の彼女を叱咤する甲斐、そして彼は唯依を後ろから羽交い絞めにしていた男へと近寄る……そして。
「ぐがっ!?」
容赦なく、男の胸を踏みつけた。そして、その眉間へと銃口を向ける。
「さて、どうしてくれようか。こいつでその軽そうな頭の風通しを良くするもよし、
西瓜
(
すいか
)
みたいに叩き割るもよし。」
「へへ…いいのかよ。」
足の下で男が何を考え付いたのかいやらしく笑う。
「此処は監視カメラにも映らねぇ、人気もない。俺らがここでMPに引き渡されても、アンタに殺されても結局は真相不明な状態で行き成り斯衛に暴力を受けた帝国兵ってことになるんだぜ。
そうなりゃあ、帝国軍と斯衛軍の関係はどうなるだろうなぁ?」
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