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死者の誘い
5部分:第五章
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問い掛けていたのである。だから男にはわからなかったのだ。
「そうか。じゃあちょっと彼に言ってくれないか」
「わかったわ。ねえジュリアス」
「んっ!?」
 エミリアに声をかけられそちらに顔を向け直す。
「ちょっと落ち着いて。それでポーランド語でね」
「おっとそうか、失礼」
 言われてやっと気付く。
「お伺いしますがその男性というのは」
「ええ、ブロンドに青い目の若い男ですよ」
「ブロンドで青い目の」
 間違いなかった。運転席に、そして店にもいたあの男だ。地下鉄の駅で寒気を与えたあの男でもある。
「彼がですか」
「はい、亡くなったそうです」
「そうだったのですか、ご愁傷様です」
「まあ事故ですからね」
 男はどうしてジュリアスがそれを聞いてきたのか深く考えない。ただこうして同情するだけである。
「仕方ありませんよ」
「そうですね」
 話しているうちにわかった。どうしてあの男が彼を見て不気味に笑っていたのか。それは誘いだったのだ。あの世への道連れとして。彼を招いていたのだ。
(危なかったな)
 心の中で安堵する。
(若しあのタクシーに乗っていたら、そして店の中に入っていたら)
 彼もまた死んでいた。間違いなく。
「ねえジュリアス」
 エミリアが安堵しているところに声をかけてくる。
「何だい?」
「お店、こうなっちゃったけど」
「どうするの?」
「そうだね」
 安堵した顔をそのままで彼女に応える。
「別のお店にする?」
「そうね」
 エミリアもそれに応えた。
「じゃあ他のお店紹介するわね」
「是非共」
 もうにこりとした顔になっていた。背筋にはまだ寒いものを感じてはいても。とりあえず助かったことは確認していたのである。それでそうした顔になっていたのだ。
「それじゃあ」
「うん」
 二人はトスカを離れようとする。だがエミリアはそこで気付いた。
「何か嬉しそうね」
 ジュリアスの表情を見て言う。
「お店が焼けたのに」
「あっ、いや」
 だがそれは誤魔化す。
「これはね」
「何かあったの?」
「君と一緒にいるからだよ」
 実にイタリア男らしい言葉で誤魔化すことにした。笑みもイタリア男の笑みを作った。
「馬鹿言って」
 エミリアはその言葉を聞いて苦笑いを返した。
「ずっと一緒にいるじゃない」
「今の君と一緒にいるからさ」
 ジュリアスは笑ったまままた言った。
「今までの君と今の君。どちらもいいから」
「そんなこと言っても何もないわよ」
 そうは言いながらも悪い気がしないのは隠している。
「ポーランド女は安くないから」
「笑顔は無料だよね」
「またそんなこと言って」
 そんな軽いやり取りもまた命あってのものなのだ。ジュリアスは言葉で遊びながら心の中ではそう感
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