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ほのぼの瀬戸内
ほのぼの瀬戸内
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[9] 最初
い。その間は俺もずっとあんたの物だ」

 旨い飯など作れぬが──、言いかけて自分がとても恥ずかしいことを考えていると思い直し、毛利は頬を紅潮させた。
 それを見た長曾我部がおかしそうに笑う。

「あんたの悪いところは勝手に解釈して、自分ひとりで結論付けて、俺の考えてることまであんたの杓子に当てはめちまうことだな。俺の気持ちは俺にしか分からねえ。疑う前に俺自身に聞けよ。あんたの気持ちも、俺が勝手な解釈しねえであんたに聞くからよ」

 赤らんだ毛利の頬に口付けて、腕の力を強くする。
 毛利の柔らかい黒髪に心地良さそうに鼻を擦り付けた。

「長曾我部」
「ん? 」

 横柄な彼の返事もむしろ好ましくおもいながら、毛利はもぞもぞと長曾我部の腕の中でもがいて身体の向きを変えた。
 彼の胴に腕を回すと笑いながら更に腕の力を強めてくる。

「なんか猫を抱き締めてる気分だな」
「猫は猫でも猫又よ。貴様など呪い殺してくれる」
「へえ、そりゃ楽しみだ」

 口の減らない彼の脇腹を小突き、毛利は居心地良い腕の中に身体を沈めた。

 このまま二人で海の青に溶けていきたい。

 しかし、それは口にはしないで心の内にしまっておいた。


「やれやれ。険悪なのかと思ったら、そうでもないじゃないか。なあ、夢吉」

 遠くに見える二人の重なった影を眺めながら、慶次は肩の猿に話し掛ける。

「命短し、恋せよ乙女ってね。あ、でも乙女以外には当てはまんないのか、これ? 」

 首を捻る慶次に答えるかのように夢吉がキキキッと鳴く。
 長曾我部と毛利の二人に聞こえないように慌てて夢吉の口を塞ぐと、慶次は彼らの邪魔をしないようにそっとその場を離れ、利家とまつの元へ帰って行った。


end
20150605
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