ほのぼの瀬戸内
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な香りが長曾我部の鼻孔を擽った。
「何、拗ねてんだよ」
長曾我部の足音に気付いた毛利が彼を振り返る。
「考え事をしていただけだ」
「余り気難しく眉間に皺ばかり寄せてると、ここに立て皺寄っちまうぜ。せっかくのあんたの美貌が台無しだ」
美貌と褒めそやされて毛利は顔を顰めながらも頬に血の気をのせる。
指で眉間を撫でてから、長曾我部がその動作を一部始終眺めていることに気づいた毛利はすかさず手を離した。
「貴様は飯でも食ってれば良かろう」
「もうたらふく食ったよ。あんたこそ腹減らねえのか」
「一食食わぬぐらいどうと言うこともない。館を荒らされ、不愉快な思いをさせられて呑気に飯など食えるか」
「不愉快はねえだろ。前田の夫婦も慶次も三人ともいい奴らだよ」
「それがくだらぬと申しておる」
「へえ、そうかい」
つくづく癇に障る物言いをする男だ。
恋人の顔を睨むと、毛利は鬱陶しそうに舌打ちして彼のそばを離れようとした。
そんな毛利の身体は長曾我部の腕に抱きかかえられ、身体の向きを正面に変えられる。
唇に向かって長曾我部の顔が下りてきた。
幾ら何でもこんなところでそんな真似が出来るかと抗いはしたが、
「どうせ誰も見てねえよ。みんなまつさんの手料理に夢中だ」
長曾我部に言われて、渋々と受け入れる。
温かい舌の感触にささくれ立った心が溶かされ、毛利の身体から力が抜けていった。
瞼にも口付けを落とされ、俯いた彼に合わせて腰を屈めた長曾我部にまた唇を奪われる。
「あんたの拗ねてる顔、実は嫌いじゃねえんだよな」
ニヤリと笑う長曾我部の余裕に腹が立ちながら、同時にそんな彼が好きなことも思い知る。
勿論、自分の感情を表に出したがらない毛利だから、そんな言葉を口にして長曾我部を喜ばせる気など微塵もない。
ただ、わざわざ表現しなくとも長曾我部には伝わっているようで、彼が毛利に向ける瞳にも穏やかで深い愛情が溢れていた。
言葉に詰まった毛利は自分を見下ろす彼の目から視線を逸らす。
しかし、毛利の身体は長曾我部の腕で後ろからがっちりと縛られていて、背中で彼と密着し、身体の熱を分け合った。
「もしかして俺が嫁さん欲しい話したから拗ねてんのか? 」
そんな訳があるかと喉元まで出掛けたが、毛利は言わずに鼻でせせら笑った。
「いつでも妻を娶れば良かろう。貴様の自由だし、我が束縛することでもあるまい」
「どっこい、俺は束縛されても全然構わねえどころか、むしろそのぐらいあんたに惚れられてえ。あー…、でもあんたが女を抱くのは駄目だ。そりゃ考えたくねえ」
「……離せ」
「嫌だね」
短く肩で笑って長曾我部は毛利の耳元に齧りつく。
「あんたは俺の物でいればい
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