ほのぼの瀬戸内
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を聞き逃さず、長曾我部がどうしたと問い返す。
しかし、その彼もしっかりまつの作った料理を口に頬張っている為、毛利は不甲斐ない彼の相手である長曾我部を睨み付けて不満の吐息を吐き出した。
「何、怒ってんだよ。いいじゃねえか、飯ぐれえ」
「あれは我が倉の備蓄ではないか。それを勝手に」
「あんたも食えよ。旨いぞ」
「貴様など大根を喉に詰まらせ死ぬが良い」
「またそれかよ」
口を開けば文句ばかりの恋人に呆れ、長曾我部は構わず残りの味噌汁を平らげることにした。
「にしても料理上手な嫁さん、いいよなあ」
何気なく言った一言がまた毛利の癇に障る。
「まつさん、別嬪だしよ。気立てのいいしっかり者で、しかも男を立てる! 悪いとこ一つもねえじゃねえか」
隣で聞いていたこれまたまつの手料理を頬張っていた慶次が、
「まつ姉ちゃんの悪いとこだって? 残念ながら一つだけあるぜ」
と口を挟む。
「へえ。どこに悪いとこがあるんだよ。俺からみたら完璧だぜ」
「太郎丸、次郎丸、モグラの三郎丸、狼の四郎丸。極めつけは熊の五郎丸。みんなまつ姉ちゃんの手下だよ。槍を持たせりゃ男顔負けだし、旨い飯は食わせてもらえるけど、トシみたいにまつ姉ちゃんの尻に敷かれてなきゃとても夫婦なんてやっていけないぜ。元親じゃ、まあ、根気が足りなくて無理だね。あんたが癇癪起こして終わりさ」
「何抜かしてやがる。俺ほど寛容な男もいねえよ」
「はははっ」
慶次は笑って済ませたが、実際、長曾我部はこれでもなかなか寛容だ。
何しろ毛利の相手をしているのだ。
寛容でなければとても相手は務まるまい。
「……くだらぬ」
まつ、まつうるさい男どもに嫌気が差し、毛利は食事も摂らずに立ち上がる。
「どこ行くんだよ」
それに気付いた長曾我部が声を掛けたが、毛利は返事もせずに行ってしまった。
見送った元親と慶次が顔を見合わせる。
「毛利の兄さんご機嫌斜めだね」
「気にすんな。いつものことだ」
「まあ、気にしろと言われても気にしないのが前田流だけどさ」
陽気に笑い、まつにおかわりをもらいに立ち上がる慶次に長曾我部も笑みを誘われ、微笑んだ。
それにしても毛利は本当に拗ねて館を出て行ってしまったようだ。
「やれやれ。腹も膨れたし、領主様のご機嫌取りに行ってくるか」
重い腰を持ち上げ、立ち上がると毛利を探して外へ出た。
汗ばむ暑さだが、夜風が肌に心地良い。
毛利の行く先は分かっているのだ。
海岸線をぶらぶら歩き、瀬戸内の海に浮かぶ大鳥居が臨める場所までやってきた。
長曾我部の思った通り、そこに佇む毛利を見つけ、彼の背後に歩み寄る。
潮の香りにのって、毛利が愛用している玉の高貴
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