胡蝶の夢
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悪を抱かずにいられる相手などこの先も現れない気がした。
しがみついた長曾我部の肩越しに見える傾いた月に、変わるに変われない自分を重ねて毛利は見ていた。
日輪の申し子と太陽を信望しているが、日の光を持つのは長曾我部の方なのかも知れない。
毛利はけして彼とは一緒の空には昇らない。
対岸の存在である月の方なのだ。
「……長曾我部…、手を」
呼び掛けに分かっていると言いたげに長曾我部が指を絡めて来た為、堪えきれない感情が毛利の中に溢れ、彼の肩に顔を埋めながら、震える身体で精を吐き出した。
「じゃあな。今度は昼に会いに来ることにする」
「そう度々来るなと申しておるのだ」
「ははっ、終わった途端にそれかよ。まあ、いいさ」
東に向かう長曾我部の小舟は昇って来た太陽の白い光に包まれて黒い影となって消えて行く。
胡蝶の夢のように霧散して、溶けてなくなる想いの残滓だけが毛利の手の中に残った気がした。
20150829
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