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裏で現実逃避しながら、器用なことが出来るようになったものだと自信の成長に、悲しんだ。
さて、授業が始まる。月曜一限は数学だ。数学と聞くと鬱々とする人も多いようだが、A君は相変わらず少数派であった。メモ用紙と化したノートと最低限の筆記用具を準備する。
今日は特に気になる問題も無いので、書くのは板書、ではなくCさんの横顔であった。
Cさんはかわいい方だとは思うが、A君が惚れたのはその点ではない。その才気溢れる言動に惚れたのだ。
それは中三のある日の国語の授業。各各マニフェストを掲げ、その優劣を競うといったものであった。まず5,6人のグループになり、代表を一人選出、代表が集まって最終討論を繰り広げる。A君は即席で造り上げた飛び級制度の推進で代表に選ばれ、Cさんも選ばれていた。
そこでA君はCさんの言及を受けて、目覚めたのだ。嗚呼、この人は神だと。ディベートに関しては少々自信があったのだが、Cさんの前では無意味であった。穴という穴を全て突かれ、的確につぼを押されているような感覚で、寧ろ快感であった。
滅多打ちにされたその後、さすがCさんと言ったところであろうか、批判の出ない置きに行ったマニフェストで優勝となった。
A君は性質上、一定数の民意は得られたが、滅多打ちによって票を削られてしまった。ただ、得たものは大きかった。
あれ以来ストーカー紛いの行為を続けている。高校生に成り立ての頃には盗撮などもしていたし、今では仕方なく決して上手くないデッサンを行っている。
一限終了と同時に、A君は数少ない友人の席へと向かう。こういう友人関係はそれなりには楽しいのだが、こんな幼稚なことに付き合わされるぐらいならBさんと居た方が大分ましだ。しかし残念なことに休み時間には話しかけてほしくないらしい。講習の面前で愛を叫ばれるのがそれほど不快なことなのか、自分にはわからない。もちろん、尊重はする。
授業を七時間分しっかりやり過ごし、演劇部へと向かう。次の公演は新入生歓迎会であるので、前回行った正月公演と同じものである。
Bさんにスポットライトを当てる。
「……!」
音響係が居ないお陰ではね返りの設定がされておらず、演者の声は全く聞こえない。出来ればこの暇な時間をBさんの声を聴いて過ごしたかったが、動作を見るに留まった。幾度とない練習の甲斐あって、役割を間違えることはない。欠伸をして、姿勢を正す。
A君は演劇部に興味が有ったわけではない。Bさんと同じ部活に入りたかっただけだ。
A君は演劇に興味が無かったとは言い切れない。ナルシストに近い性格は人前に出ることを厭わなかった。
Bさん、加えてCさんは演劇に興味があった。にもかかわらずCさんは演劇部ではない。しかし、A君にとっては好都合であった。
一通り劇の流れを追ったあと、程無
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