第6章 流されて異界
第126話 犬神
[10/10]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
かに俺の視線から逃げようとした事が丸分かり。
ただ、何を考えているのか分かりませんが、何故かその後、それまでよりも首に回した腕に力を籠めて……。
より密着するようになった為に触れる彼女の長い髪の毛が妙にくすぐったく……。
「オマエ、もしかして、そんな目でずっと相手を睨んでいた、なんて言う事はないよな?」
未だ気を緩めるには早すぎる。そう考え、出来るだけ普段の……。妙に近すぎない友人に対する口調で続ける俺。
それに――
それに、流石にハルヒの視線は普通ならあまり考えられない。確かに一般的な拉致事件――例えば、多少気が強い人間ならば、そう言う態度でずっと犯人に敵対的に取り続ける人間もいるでしょう。そもそも、そう言う態度で臨む事がストックホルム症候群を防ぐ方法だとも思いますし。
但し、今回は一般的な事件とは違う。そもそもあの犬神使いが施して有った結界をどう破ったのかも謎なのですが、それでも、襲撃者が単独でハルヒの前に現われたとは思えない以上、ハルヒは犬の首だけの化け物の姿を見た後に、壁抜けや土の中を飛ぶように移動する、と言う非日常を嫌と言うほど体験したはず。
普通に考えると、この状況下では絶望的な未来しか想像出来なかった、と思うのですが。
「そんなの当たり前じゃないの」
相変わらず不機嫌な振りをしながら答えるハルヒ。
そして其処から先の言葉は口にしなくても分かる。今の彼女には具体的に反撃する方法がない。でも、諦めて仕舞えば心が折れる。暴力に屈して仕舞う事が分かっているから。
だから、瞳や口だけでも反抗し続けたのでしょう。
ただ、おそらくそんな部分も――
「そうか――」
短く答える俺。まぁ、今回は幸いな事に大事には至らなかった。それにこんな事件は、一生の内にそう何度も出会う事件ではない。
俺が居なければ弓月さんは今回の依頼をSOS団に持ち込む事もなく、ハルヒが危険な事件に首を突っ込む可能性も低くなる。表だって事件にハルヒを関わらせなければ、有希と万結が人知れず処理して仕舞うでしょう。
ハルヒのハルヒ足る所以を壊すような訳にも行かない。例え、その性質を何モノかに利用されたとしても。
冷たい大気の下へ……。まるで深海に向かってゆっくりと下降して行くふたり。
「まったく、土ごと空中に放り出されるとは思わなかったよ」
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ