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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第126話 犬神
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返す俺。
 目印はハルヒの気配。アイツ本人の気配と、それに俺が渡した護符(銀の首飾り)を身に付けている限り見失う事はない。

 そして、確信する。矢張り、アイツの気配を感じるのは地下深く。地上を走って居るのなら、ほぼ原始林に近い林を、このように真っ直ぐ移動する事はそもそも不可能だし、もし空中を移動しているのなら、枝から枝へと瞬間移動を繰り返している俺の視界に入っても不思議ではない。

 但し、ならばどうする?

 移動速度は人間が全速力で走って居る程度なので、術者として考えるのならかなり遅い部類に入る相手。既に完全に追い付いているのは間違いないのだが……。
 但し、地上に引っ張り出す方法が――

 大地に爆発を起こす類の呪符を複数枚投入して大穴を開ける……これは流石に乱暴過ぎるし、ハルヒを無事に取り戻せるか微妙。そもそも相手は、ハルヒを抱えている可能性が高いので、爆発の範囲を細かく、それも複数の術を制御するには……俺だけでは無理。
 もっとも得意な電撃を使用する方法もダメ。ハルヒを抱えている相手を、ハルヒと別の存在だと護符が認識出来る訳もなく、雷撃自体が俺の渡した護符により完全に無効化される可能性が大。
 流石にこれから本格的に戦う可能性の高い相手に、俺の属性を知られるのは問題が有り過ぎる。

 それならば――

 ハルヒを示す光点を中心に半径二メートルを不可視の手で無理矢理に掴み上げる。そして、そのまま上空に馬鹿力に物を言わせて放り出した!
 そもそも、俺の動体視力は非常に良い。球技大会の時には名付けざられし者の投じた一五〇キロオーバーの速球ドコロか、有希が投げて来た手加減なしのセカンドへの送球をいとも簡単に捌く事が出来たのだ。人間の全速力、時速三〇キロ程度で地下を行く物体を捉える事など児戯に等しい。

 そして次の刹那、無理矢理に上空へと放り出された土砂から何かが跳び出す。
 その次の瞬間!

 上空で閃く白刃! 交差する三つの身体。雲ひとつない満天の星空に、黒い何かを放ちながら宙を舞う人間の腕。
 そして!

「遅い!」

 今まで何をやって居たのよ。罰金モノの遅さよ、これは!
 何故か非常に元気な様子の元人質の少女が俺の腕の中で騒いだ。

 そう、突如、ハルヒを抱えたまま空中に放り出された襲撃者。当然、その無防備な状態を見逃してやるほど俺は甘くもなければ無能でもない。
 突然、上空に向かうベクトルを付けられたとしても、土の中を時速三〇キロ程度で進んで居た力が無くなる訳ではない。そもそも大地を踏みしめて走って居た訳ではなく、土を大気と同じような存在と為して土の中を飛んでいる状態だと考えた方が分かり易い物体。
 当然、半径二メートルの土塊など一秒もかからず駆け抜け、次の瞬間には何もない氷空
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